菅義偉首相は、9月16日の就任会見で、新政権の理念を「自助、共助、公助」と述べました。ようするに、困ったことがあったら、まずは自分で努力しろ。それで解決しなければ周りを頼れ。それでもダメなら最後に国に言って来い…という、行政府の長がその責任を放棄したかのような無責任な理念です。しかし、この呆れ果てた理念を、ひと足先に実践した人がいたのです。そう、今回の事件の女性です。
新型コロナの影響で仕事を解雇されてしまった女性は、必死に次の仕事を探し回りました。これは「自助」です。しかし、どうにもならずに住む場所も失ってしまった彼女は、繁華街で「食べ物をください」と書いた紙を持って路上に立ち続けました。これは「共助」です。そして、見ず知らずの人たちに助けられて、半年ほどは生き延びることができました。しかし、とうとう最後のところまで追い詰められてしまい、犯罪に手を染めてしまいましたが、その結果、ようやく「公助」に辿り着くことができたのです。
新型コロナの影響で、さまざまな業種が大きなダメージを受けていますので、あたしは「Go To トラベル」や「Go To イート」などのバラマキ政策を頭ごなしに批判するつもりはありません。しかし、今回のような事件を知ると、今夜寝る場所がなく今食べるものもない人たち、今、この瞬間も本当に困っていて旅行や外食どころではない人たちのことが、完全に後回しになっているように思えてならないのです。少なくとも、あたしの納めた税金は、あたしより困っている人たちのために使ってほしいと思います。
(『きっこのメルマガ』2020年10月28日号より一部抜粋)
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