日本学術会議が中国と交わした“覚書”の闇。日本が工作に弱い理由

 

中国科技協との協力覚書には「軍事研究せず」の文言なし

その一方で、中国科学技術協会との協力覚書には、学術活動の情報交換、研究者間の交流や共同ワークショップなどを推進することが謳われています。したがって、これが日本の全科学者の総意ということになります。

しかし、この覚書には「軍事研究はしない」ということは、どこにも書かれていません。中国の軍事に資する研究はしないことを明記していないのです。一党独裁の軍事大国を相手に、なぜそのことを書かないのでしょうか。日本に対しては軍事研究をしないと何度も述べているのですから、そのことを盛り込むべきでしょう。

日本学術会議と中国科学技術協会間の協力覚書

日本学術会議は自らのHPで「日本学術会議は、我が国の人文・社会科学、生命科学、理学・工学の全分野の約87万人の科学者を内外に代表する機関であり、210人の会員と約2,000人の連携会員によって職務が担われています」と公式に書いています。

「約87万人の学者を代表する」というのですから、その意見は、日本の全科学者の意見だということになります。また、全学者に対する影響力も多大なものだと自負しているはずです。であるならば、なぜ中国との共同研究が軍事力強化に使われる危険性があることなどについて、勧告しないのでしょうか。

また、先日のメルマガで、「かつて日本学術会議は、2016年に防衛省の安全保障技術研究推進制度に応募した北海道大学に対して、日本学術会議の幹部が北大総長室に押しかけて圧力をかけ、研究を辞退させたことも明らかになっています」と書きましたが、このニュース元であった、北海道大学名誉教授の奈良林直氏は、「日本学術会議の幹部が北大総長室に押しかけた」という事実がなかったと、発言を訂正しました。

そのため、本メルマガもその部分を訂正しますが、しかし、日本学術会議は2017年3月に「軍事的安全保障研究に関する声明」を発表し、安全保障技術研究推進制度を問題視し、名指しこそしなかったものの、これに応じた北海道大学を批判し、そして北海道大学は応募を取り下げるにいたったわけです。

繰り返しになりますが「87万人の科学者を代表する」と自負する機関が、北海道大学の決定を反対するような声明を出せば、それは意図的に「圧力」をかけていること以外の何物でもありません。ましてや、日本学術会議の会員になることを首相に拒否されれば、「学問の自由が奪われる」と大騒ぎするほど学者にとっては権威ある(と思っている)機関です。「忖度」どころではなく、自他ともに一種の「命令」だと感じてもおかしくありません。

日本学術会議は、最初は全国の研究者による直接選挙だったものが、それだと組織票が出るということで各分野の学協会推薦方式になったのですが、それだと学会の仲間うちで会員を引き継ぐことが問題になり、現在は210人の現会員と2,000人の連携会員が次の会員を推薦し、選考委員会を経て推薦する候補者を絞り込むスタイルに変わったそうです。

それだけ日本学術会議の会員になりたい学者が多いということです。逆にいえば、利権化、既得権化しやすいわけです。今回、そのあたりをマスコミや市民運動家が批判しないのは不思議なことです。

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