バイデン氏の「友人」に日本の政治家・経済人がいないのはなぜなのか

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米大統領選はバイデン新大統領誕生でほぼ確実な状況となり、日本のマスメディアも本人や家族を紹介するなど、バイデン氏の人物像に関心を寄せています。しかし、そうしたときに日本人の友人知人が登場する場面がないと語るのは、メルマガ『NEWSを疑え!』を主宰する軍事アナリストの小川和久さん。50年のキャリアがあり副大統領も務めた人物と親しい日本人がいないのは、この国の外交活動、経済活動の課題と指摘し、同時に、菅首相にとってはチャンスでもあると伝えています。

日本にバイデンの友人はいないのか

11月9日号の「アメリカに学ぶものなどないだって?」(参考:「TVタレントを笑えず。識者も繰り返す「他国軽視」という日本の悪癖」)の続きのような話ですが、ひとこと言っておかないと気が済みません。米国の大統領選挙でバイデン氏の勝利が確定的になっています。しかし、それを報じるマスコミのどこにもバイデン氏の友人や知人に関する情報が出ていないのは、どうしたことでしょうか。

新聞にもテレビにも、米国の事情に詳しい研究者や識者が出演していますね。でも。バイデン氏と親しい人が登場したり、その人の名前が口にされたりすることはないようです。その一方で、バイデン氏と菅首相の電話会談が行われ、尖閣諸島について日米安保条約第5条の適用範囲だとする言質を取ったと、マスコミは自分たちの手柄でもあるかのようにしたり顔です。

実を言えば、これ、あのときと似ているのです。1992年秋にクリントン氏が当選したとき、アーカンソー州の知事から躍り出た人物で、中央政界との関係も薄かったこともあったのでしょうが、米国内でもにわか仕立ての「FOB(フレンド・オブ・ビル)」、つまり「クリントン氏の友人」が雨後のタケノコのように名乗りを上げることになりました。そのとき日本は、アーカンソー州に縁のあった三洋電機の井植家の関係しか、クリントン氏との接点はなかったのです。それはそれで仕方のないことだったかも知れません。

不動産業を営む異色の経済人ということもあって、トランプ氏の場合も日本側の接点はほとんどなく、懐に飛び込んだ安倍首相が最も親しい日本人になるという結果が生まれました。

しかしバイデン氏の場合、政治家のキャリア50年、オバマ政権の副大統領をも務めた重鎮です。東日本大震災の時も、現地に入って被災者を励ましています。出会いがどこであれ、日本の政治家、経済人で親交を結ぶ人物が生まれていない方が不思議なのです。

米国関係だけを見ても、日本側は十年一日の如く同じ顔ぶれの知日派としか交わってきませんでした。将来の有望株を探し、その「ご新規さん」、つまり発掘した若い優れた人材との関係を構築していくという、外交や経済活動の基本的な取り組みを怠ってきたのです。これほど引っ込み思案の内弁慶では、国際社会で存在感を示す国になることなどできるはずがありません。

しかし、逆に、そんな日本の現状を自覚して相手の懐に飛び込めば、菅首相がバイデン氏の最も親しい日本人になるチャンスもあると言えるのです。外交が苦手とされる菅首相ですが、ふたを開けてみたらバイデン氏から頻繁に電話がかかるようになっているかもしれません。菅流の出番です。お手並み拝見と参りましょう。(小川和久)

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地方新聞記者、週刊誌記者などを経て、日本初の軍事アナリストとして独立。国家安全保障に関する官邸機能強化会議議員、、内閣官房危機管理研究会主査などを歴任。一流ビジネスマンとして世界を相手に勝とうとすれば、メルマガが扱っている分野は外せない。

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