『鬼滅の刃』商標を狙う中国。日本は無印良品の屈辱を再び味わうのか?

2020.11.23
by tututu
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先日、その劇場版が公開からわずか24日間で興行収入200億円を突破した『鬼滅の刃』。巷では様々なコラボ商品を見かけるなど、出版・映画業界にとどまらない社会現象クラスのブームとなっているが、中国ではそんな“鬼滅人気”にあやかるべく、無関係の企業が『鬼滅の刃』の商標登録を狙っていると一部メディアが報道し、波紋を呼んでいる。

記事によると、中国で商標権を管轄している国家知識産権局商標局のサイトで『鬼滅の刃』を検索すると、すでに20以上の中国企業によって商標申請が行われているとのこと。その業種は教育、広告、家具、アパレル、飲食、日用品など多岐にわたり、いずれも目下許可待ちの状態になっているという。

商標登録の申請数が膨大すぎる中国

中国国内における商標登録に関する最近の状況をみてみると、近年オンラインによる申請が広く普及し、登録にかかる費用も安価になったこともあり、商標登録の出願がかなり増えているようで、2019年の出願件数はなんと783.7万件にのぼるという。

ちなみに同年の日本での出願件数は19.1万件。中国と日本では人口に大きな差はあるものの、そうだとしても相当に多い数となっており、中国国内における商標への注目度の高さが窺える。

このように商標登録の申請が増えている中国だが、そのため申請が滞っているのかと思いきや、逆に登録までの所要期間は、近年大幅に短縮されているという。

11月8日付のAFPBB Newsの記事によると、2016年には13~14か月かかっていた商標登録までの期間が、現在では8~9か月と5か月間も短縮されたとのこと。近年の商標登録の増加に対応すべく、国のほうも体制を整えたということだろうか。ちなみに日本国内の場合だと、約13ヶ月かかるという。

そして中国の商標登録に関する独特な点、日本を含めた他の国からすると困りものなのが、外国商標の保護が不十分な点だ。

日本の商標法には「他人の周知商標と同一又は類似で不正の目的をもつて使用をする商標」という条項があり、海外で周知された商標をいかに日本国内で真っ先に出願しても、無効になる可能性が高い。この手の規定は、日本以外の多くの国における商標に関する法律にも存在するが、中国はその規定内容が他の国と比べて緩いという。

中国の商標への意識は変わりつつある?

このような中国による商標の“横取り”の事例で、日本国内でもよく知られているのが、良品計画が抱えた一連の商標訴訟だ。

【関連】無印良品、中国で商標敗訴は当然?国家ぐるみで知財をパクる中国「7つの手口」=鈴木傾城

中国へ進出した良品計画と、中国国内ですでに「無印良品」の商標を保有していた現地企業との商標権を巡っての裁判だったが、結果は現地企業の勝利。敗訴となった良品計画には賠償金の支払いが命じられたことが日本国内で報じられると、ネット上では一斉に怒りの声があがった。

ただ、この裁判の結果に関しては中国国内の世論でも「この裁判結果はまともじゃない」との声があがるなど賛否両論があったようで、さらに最近では中国当局も“パクリ国家”との誹りを払拭すべく、コピー商品や海賊版追放の取り組みを強化させているようだ。

その影響もあるのか、今回の中国国内における『鬼滅の刃』の商標登録に関しても、現地の商標登録検索サイトを見るに、確かに様々な現地企業が申請を行っているようだが、そのほとんどが拒絶されているという情報も。ちなみに集英社は、2019年の段階ですでに『鬼滅の刃』の中国国内における商標登録の申請をいち早く行っているようだ。

日本国内で何かヒットコンテンツが生まれる度に取沙汰されてきた、中国による商標の“横取り”。しかし、過去の失敗に学んだ日本企業の手際のよい対応と、中国国内における商標への意識の変化によって、それも過去のものとなりつつあるのかもしれない。とはいえ、鬼滅ファンにとってはとても心配な状況だけに、今後の推移を見守りたいところだ。

羽織の市松模様を商標出願?日本国内でも問題に

また『鬼滅の刃』の商標登録を巡っては、日本国内でも物議を醸している事柄がある。版元の集英社が、同作の主人公・竈門炭治郎が着ている市松模様の「羽織の柄」を商標出願したことだ。

認められる可能性は低いとの専門家の声も散見されるが、日本の伝統的な着物の柄を一企業が商標登録することに対し、抵抗感を示す向きも少なくない様子。国内外を問わず商標についても大きく話題になるなど、『鬼滅の刃』の人気ぶりには驚くばかりだ。この勢いに乗って興行収入首位の座を『千と千尋の神隠し』から奪うのかどうか。今後も目が離せそうにない。

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