AI導入がトドメ。大卒者の半数が定職に就けない時代がやってくる

 

AIはこれから社会のさまざまな場所に導入されますが、それは過去30年間に続いて来た「情報革命による生産性の向上」と「貧富の差の拡大」をさらに加速することになります。

上に紹介したビデオには、「これから15年の間に50%近くの職がAIによって奪われる」という経済学者の発言が紹介されていますが、とても現実的な数字です。

日本のように雇用規制のない米国では、それは確実に失業者もしくは最低賃金の仕事に追いやられる人々を大量に生み出します。雇用規制がある日本の場合には、「派遣社員の比率が増える」という形で具現化すると思いますが、実質的には同じことです。「大学を卒業した学生の半分以上が定職につくことが出来ない」時代はすぐそこまで来ているのです。

こんな暗いことばかり書いていると誤解されそうですが、私はAIの導入に反対しているわけでもないし、AIの研究に否定的なわけでもありません。資本主義社会の中で、企業が経済活動をしている限り、最新の技術を使ってコスト削減し、事業を効率化しようとするのは当然であり、それを否定していては、人類の発展はありません。

大切なことは、こんな「とてつもない変化」が実際に起こりつつあることを、オブラートに包まずに正直に認め、その上で「広がりつつある貧富の差にどう対処するか」を議論することだと思います。

何もしなければ、貧富の差はさらに広がり、社会に不満を持つ人たち、人生に絶望した人たちを増やすことになります。社会にそんな人たちが増えれば、トランプ氏のような出鱈目な人がポピュリズムで選挙に勝ってしまう可能性が増えます。ちょっとしたきっかけで、暴動も起こるようになってしまいます。

今年、警察官による黒人の殺害をきっかけに、Black Lives Matterのデモで集まった人たちが暴徒化する事件が米国の各都市で起こりましたが、その根本の問題は貧困なのです。米国には人種差別がある分だけ、日本の貧困とは質が異なりますが、貧困の結果「何も失うものがない」と考える人たちが犯罪に走りやすくなるのは、どの国でも同じです。

この問題に対する答えを見つけるのは簡単ではありません。共産主義ではうまく行かないことはソビエト連邦が証明しました。人類の発展のためには資本主義が適していることは明らかですが、それが社会を階層化させ、貧富の差を広げ、さらに貧富の差が親から子へと引き継がれてしまうことは既に歴史が証明しています。

ユニバーサル・ベーシック・インカム(UBI)は一つの可能性ですが、いまだに全面的に導入した国はありません。私はUBIに関しては、財源のことや、人々の労働意欲のことは楽観視していますが、「人類の大半が遊んで暮らせる社会」が果たして人類全体にとって良いことなのかどうかに関しては、大いに疑問を持っています。

上に書いたように、15年後の2035年までには、AIにより、50%以上の職が奪われることになるのです。15年なんてあっという間です。第二のトランプ大統領、それどころか、第二のヒットラー総統を誕生させないためにも、早く答えを見つける必要があると私は思います。

image by: Shutterstock.com

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マイクロソフト本社勤務後、ソフトウェアベンチャーUIEvolution Inc.を米国シアトルで起業。IT業界から日本の原発問題まで、感情論を排した冷静な筆致で綴られるメルマガは必読。

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