今月28日から来月11日まで全国一斉に一時停止することが決まった観光支援事業「Go To トラベル」。年末年始を目前に控えたタイミングでの決定に、関係者の間では早くも混乱が起きている。一方、この突然の方針転換に、菅義偉首相を支えてきた二階派幹部からは「勝手なことをしやがって」と不満の声が上がっていると毎日新聞が報じている。
「ガース―です」挨拶で支持率低下の愚行
菅首相の肝いりの政策だった「Go To トラベル」。菅首相は11日に出演した動画中継サイト「ニコニコ」の番組の中で、「Go To トラベル」の一時停止について「まだそこは考えていない」と否定していた。にもかかわらず、なぜ菅首相は今回の決断に至ったのか。
この急な方針転換は菅内閣支持率の大幅な低下が影響したとみられている。
菅首相は同番組の中で「ガース―です」と自己紹介。「無神経の極み」「空気が読めていない」「国民をバカにしている」と批判が殺到した。
その直後となる12日に行われた毎日新聞の世論調査では、内閣不支持率が49%と支持率の40%を初めて上回った。また、14日に発表されたNHKの調査では、内閣支持率は42.4%と、前月比より14ポイントも下落。
この支持率の急落を受け、「Go To トラベル」の見直しに慎重だった菅首相も全国一斉の一時停止に舵を切った。今回の決定は世論の声に押されたと指摘する声が多いのだ。
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二階派は反発「勝手なことをしやがって」
これに「あぁそうですか」と納得していないのが、二階俊博幹事長率いる二階派だ。
観光事業の支援を目的にスタートした「Go To トラベル」だが、これを政府がゴリ押しした背景には、二階幹事長の力が働いたとされている。
二階幹事長といえば、全国旅行業協会(ANTA)の会長を務め、会員約5800社を誇る業界団体、全国旅行業協会との関係がかなり深い。いわば、観光族議員の“ラスボス”的な存在だ。
当然、二階派に所属する議員たちも観光業界とは繋がっていて、「Go To トラベル」を推進する議員が多いことは明白である。
そんな二階派幹部から漏れてきた「勝手なことをしやがって」という声。
今回の決断は二階幹事長に相談することなく菅首相が判断したとみられ、今後2人の関係に微妙な隙間風が吹きそうだ。
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二階派以外の自民党内議員からは、「Go To トラベル」に関する菅首相の対応に不満も出ていて、1年以内に想定される衆院解散、総選挙への影響が避けられなくなると懸念する声が上がっている。
これからさらに支持率が減少すれば、菅政権の求心力低下は避けられない状況になりそうだ。