あの日の日本と同じ。米株式市場IPOバブルが起きている真の理由

 

今のIPOバブルも同じです。Robinhoodが株の取引を民主化し、これまで株式投資に見向きもしなかった大学生も含めた若い人たちがRobinhoodを通じて株を買っているのです。彼らに共通するのは、ジム・クレイマーのような株式評論家のビデオをエンターテイメントとして楽しみ、電気自動車、AI、オンライン・ギャンブリングのような目新しい業種の派手なIPO株に、「適正価格」を無視して投資して来る点です。

ここ最近のIPO株は、すべて売り出し価格を当初の予定より5割ほど高く設定していますが、そこからさらに5割増し、10割増しの値段がついてしまうのです。

c3.aiの場合、当初の売り出し価格は、$36から$38とされていました。それが会社にとっても投資家にとっても「妥当な価格」だからです。しかし、どんな価格で売り出しても株価が上昇する今の状況を考えれば、「妥当な価格」で売り出すことは、会社にとって「お金をテーブルに残す(本来、自分のが手に入れることが出来たお金を、みすみす逃すこと)」に相当します。

そこで、c3.aiは売り出し価格を「妥当な価格」よりも少し高い$42で売り出すことにしたのです。しかし、Bobinhooderたち(Robinhoodで取引を始めたばかりの投機家たち)にとっては、いくらで売り出そうとIPO株は投機のチャンスであり、そこで初日の株は一気に100ドルにまで跳ね上がってしまったのです。

下のグラフはc3.aiの上場初日からの株価の動きですが、2日目から3日目にかけて$133にまで上昇し、その後、$100近くにまで株価を下げています(追記:その後、$137まで上がりました)。

Mchart-mchart.html

C3AI INC A<AI>(SBI証券提供

私のような長期保有型の投資家にとって、c3.aiはマネージメントもしっかりしているし、ビジネスも伸び盛りの分野なので、魅力的な会社です。当初の売り出し価格の$36から$38、もしくは実際の売り出し価格の$42程度であれば、私も喜んで株を購入し、少なくとも3年から5年は保有し、株が2倍から3倍になることを期待します。

しかし、$100という価格は、その上昇分を既に反映してしまっており、その価格で買って長期保有しても、大きなリターンを得られる可能性は低いのです。

全く同じことが、DoorDashとAirbnbで起こっています。どちらもそれなりの魅力を持った会社ですが、引き上げられた売り出し価格をさらに上回る株価がついてしまっており、長期保有型の投資家にとっては魅力に欠ける株になってしまっているのです。

print
いま読まれてます

  • あの日の日本と同じ。米株式市場IPOバブルが起きている真の理由
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け