笑ってはいられない「ガースー内閣」支持率どん底の深刻な裏事情

 

勿論、TV時代に戦争が不可能になったわけではなく、90年代以降では、「原油まみれで真っ黒になった鳥の映像」で敵愾心を煽ったり、「偵察衛星から撮影した誘導ミサイル着弾シーンの白黒映像」など間接性が高く、同時に「おどろおどろしい」映像効果など手を変え品を変えて映像による世論操作を行なうことが進みます。

それはともかく、TV時代の到来は、民主政治における指導者像に対しても変化を与えました。1960年のアメリカ大統領選では、初のTV討論にあたって、ファウンデーションの研究を徹底したケネディがニクソンを制したというのは有名な話です。

その後は、TV映りという要素は政治家にとって重要な技術として考えられるようになりました。以降は、様々な形で「映像化」が行われ、そこにストーリー性が付与されることで、政治が動いて行くこととなります。

日本の場合も、角さんの「ヨッシャ」とか、大平さんの「アーウー」などは、TV映えということから考える必要があるし、三木政権が内実はボロボロであったにも関わらず延命したのも「TVの効果」がありました。また、福田赳夫政権や森喜朗政権が短命に終わったのもそうかもしれません。極め付けは小泉政権で、彼の構造改革論というのは、実は中身はカラッポですが、それが5年も持ったのはTV映えということが大きいと思います。

その点で言えば、菅総理は「TV対策」がうまく行っていないので、支持が下がったというストーリーは描けると思います。確かに、ご本人が密室コミュニケーションだけで総理総裁まで来た人であり、周囲にもコミュニケーションのプロがいないということで、この「映像対策の欠陥」ということはあると思います。

コミュニケーションのテクニックということでは、ネット上のニックネームであった「ガースー」を自称してしまったというのは、確かに致命的でした。この「ガースー」という言葉のニュアンスですが、例えば山本一郎さんなどが散々使い倒してきたわけですが、そこには複雑な意味合いが「まとわりついて」います。

具体的には「官邸の奥で辣腕を振るい、メディアに圧力をかけ、安倍政権を支え、おまけに東京新聞の望月記者とのバトルを劇場型に仕立てるぐらいの凄味のあるヤリ手」であるから、世論としては大いに警戒してもいいが、「安倍さんよりはイデオロギー色は淡味で、基礎能力が高く自分の判断基準もありそうなので、期待はできるが期待し過ぎてもダメ…」的な、非常に微妙で繊細なニックネームであるわけです。

そうした複雑さをまとった「ガースー」という長音を入れるとカタカナ4文字を、「中の人」が口にした途端に、その4文字のオーラも威厳も、悪印象も好印象も手品のように「煙がドロン」的に消滅してしまったわけです。その瞬間のネット界隈の落胆を、多分「中の人」は分からないんだろうなあ、的な落胆のスパイラルというか、そういう話です。それ以上でも以下でもありません。

問題は、ですから「ガースー」発言に何か本質的な意味があるわけではありません。また、菅政権としてトップのイメージ戦略、あるいは政権としてのブランド戦略がダメということはあるわけですが、それも本質ではありません。

そうではなくて、やはり問題は「ファクター2020」なのです。そうそう、その前に「2000」の話をしておかねばなりません。

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