笑ってはいられない「ガースー内閣」支持率どん底の深刻な裏事情

 

21世紀の世界の政治においては「ファクター2000」というのが、大きな要素になっています。それは音声でも動画でもない別の要素です。それは、「イデオロギーにおける赤組、青組のガチンコバトル」という要素です。

つまりポスト冷戦時代における、イデオロギーの対決が大きく2つに集約されてしまった中で、その「赤組VS青組」というヴァーチャルなネトゲーに、世論の多くが参加してしまい、その全員参加、集団監視の中で、大衆政治家はイデオロギーの「プロゲーマー」として振る舞う、そうした時代が到来したのでした。

20世紀型の政治家は、曲がりなりにも政策パッケージがあり、その点では職業政治家であり、ただし、それが民主制のオーソライズを受けないと権力が発生しないので、TVを使ってイメージ戦略をしていたわけです。

ですが、21世紀の政治家たちには、この「赤組青組ゲーム」のプロゲーマーとして、素人が唸るような「敵を叩くプレイ」を誇示したり、「凡人の持っていないアイテム」を振りかざして敵を攻撃したりすることが求められました。

ですから、とにかくプロゲーマーとしての「公開されるゲームプレイ」におけるパフォーマンス「だけ」が注目されます。壁を作るとか、靖国に「みんな」で行くとか、原発や基地反対とか、マイノリティーに憑依して赤組をぶっ叩くとか、逆に国民国家の「殺しのライセンス」に憑依して青組を叩くとか、世界中で似たような現象があり、そこでパフォーマンスを上げると、大衆政治家として政策実行のための「ポイント」がもらえるという仕組みです。

中には、そのせっかく貯めたポイントを最適解の実行に消費するのではなく、ひたすら自分の再選キャンペーンに使ってしまうポンコツな政治家もいるわけですが、例えば安倍前総理の場合は、せっせとネトゲで「青組叩き」をやってポイントを集めては、譲位と改元、日韓合意、日米相互献花外交、金融緩和、トランプ封じなど中道政策実現というアイテムに交換していたわけです。

菅さんの悲劇は、これは中の人の性格によるのだと思いますが、この「赤組青組バトル」には本気ではないということです。官房長官時代には、望月記者との掛け合い漫才などで「バトル」をやっていたわけですが、あれはあくまで計算された「司司(つかさつかさ)」の挙動であり、だからこその「ガースー」だったわけです。

ですが、決して本気ではなかったし、それはそう顔に書いてあったわけです。ですから、その菅さんが総理になったということは、これからは「ネトゲのバトル」でごまかすことはしませんよ、とにかく政策課題にしっかり取り組みます、という姿勢に受け止められたのです。

そうではあるのですが、安倍時代の「赤青バトル」というスタイルをいきなり捨てるのは危険です。ですから「学術会議問題」などで、下手くそな官僚の筋書きに乗ってみたわけですが、それも本腰ではないし、そもそも「赤組青組バトル」ゲームというのは、世界中で盛り上がっていてギャラリーも目が肥えているので、菅さんの曖昧な姿勢は「プレイとして面白味に欠ける」ということになってしまったわけです。

問題は、しかしながら「菅総理の政治姿勢は時代として必然」であるし、やや大袈裟かもしれませんが人類的な意義があるとも思います。それは2020年代の政治指導者に求められるのは「ファクター2020」という全く別の次元のチャレンジだからです。つまり「赤組青組バトル」の時代ではなく、もっと困難な課題への挑戦です。

それは「問題が深刻なので、ボロボロになっても敗戦処理に徹する」ということです。

2000年代から2010年代の世界はというのは、まだ余裕がありました。ですから、ブッシュはイラク戦争に猛進して「赤組」側でバトルをやってポイントを稼ぎました。オバマは、ゲームに入った時点で膨大な青色ポイントを持っていましたから、不況対策でそれを使い果たして8年間完走しました。トランプに至っては、4年間赤色のポイントをしこたま貯め込みましたが、選挙というカジノで全部スッてしまったわけです。ですから、この賭場はインチキだといつまでもブーブー言っているのです。

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