危機管理のプロ懸念、小池・吉村両知事のバカ殿ぶりが招く最悪の事態とは

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1日あたりの感染者数が東京で1000人を超え、ついに首都圏の主要都県で緊急事態宣言が検討されるなど、ますます混迷を極める新型コロナウイルスの感染拡大。この事態で目につくのが、都道府県首長や政府関係者の「後手後手」対応、そして「裸の王様」のような勘違いぶりです。軍事アナリストで危機管理の専門家である小川和久さんは、自ら主宰するメルマガ『NEWSを疑え!』の中で、古くから伝わる中国の故事成語関連の書物を引きながら、新型コロナに対する日本の行政関係者の「夜郎自大」とも言える態度を憂いています。

夜郎自大は危機管理の大敵

新型コロナウイルス感染症が感染爆発寸前になっている年明けにあたり、その克服に取り組み、教訓を汲み取るため、自戒を込めて「夜郎自大」という言葉を頭の中で書き初めしたいと思います。

夜郎自大とは、『岩波四字熟語辞典』によれば、「自分の力量も知らず、尊大な態度をとるたとえ」だそうです。

そして、「漢代、西南地方の異民族の中では滇(てん)国と夜郎国とが最も大きかった。彼等は、漢の広大なること彼等の比ではないことを知らずに『 滇王、漢の使者と言いて曰く、漢はわが大なるにいずれぞ(漢と滇のどちらが大きいか)、と。夜郎候に及ぶもまた然り(夜郎候も同じ質問をした)』(『史記』西南夷伝)」との説明が続きます。

日本語訳については、講談社の諸橋轍次『中国古典名言事典』にある「世間知らずで、自分だけ威張っている者の喩(たとえ)」のほうがピタリと当てはまる感じがします。

なぜ、新年早々に夜郎自大を持ちだしたかといえば、新型コロナウイルス感染症と向き合う日本の行政にその傾向が散見されるからです。

まず、都道府県知事。昔から「田舎大名」「バカ殿」と陰口が飛び交っていることでもわかるように、とかく「裸の王様」になりがちの傾向があります。

個性豊かな人材が少なくありませんし、官僚出身など有能な知事も数多く腕を振るっています。とにかく喋る中身を沢山持っていますから、人の話を聞くよりまくし立てることになりがちです。そういう知事たちに対して、自治体の職員たちは直言しなくなるのは致し方ないことかも知れません。かくして「裸の王様」の誕生となるのです。

新型コロナウイルス感染症で見ると、オンラインでの全国知事会で発言がテレビのニュースに取り上げられる知事は、同じ「裸の王様」でも救いがあります。発信し、行動した結果には厳しい批判もあり、嫌でも路線を修正せざるを得ないからです。それに対して、発言が取り上げられないタイプの知事ほど、「裸の王様」からバカ殿への道を転げ落ちていく危険性を抱えています。

このタイプの知事は、県職員に対してだけ強気な内弁慶になり、政策的にも夜郎自大に陥ることは避けられません。これでは、感染症対策だけでなく、大規模災害や原子力事故などの危機管理で後手を踏むことになるのはいうまでもありません。

知事ばかりではありません。日本の政府には同じ傾向があります。「日本モデル」などと自画自賛の言葉が出てくるのは、夜郎自大である証拠です。

諸橋轍次『中国古典名言事典』には、「難に臨みて、遽かに(にわかに)兵を鋳(い)る」(『晏子(あんし)春秋』)という言葉も紹介されています。「困難があってはじめて兵器を製造しはじめる。それでは戦いに間に合わない。事はあらかじめ用意すべきだ」との意味です。危機管理の基本中の基本を述べていると受け止めるべきです。

夜郎自大と似たような言葉はほかにもあります。「井の中の蛙大海を知らず」は『荘子』に出てくる「井蛙之見」が語源とのことです(『岩波四字熟語辞典』)。「井戸の中にいる蛙に海のことを話してもむだなのは、自分の狭いすみかにとらわれているからだ」とあります。『岩波四字熟語辞典』は同じく『荘子』にある「夏虫疑氷(かちゅうぎょうひょう)」にも触れています。「夏の虫は暑い季節しか知らないから、氷のことを話しても信じようとしないということ」です。

古今東西、同じような言葉が残されているのは、人間、それもリーダーが陥りやすい失敗ということにほかなりません。

新年にあたり、まずは以上の角度から自らを戒め、関係のあるリーダーにも助言し、一日も早くコロナを克服し、そこで得られた教訓を大規模災害などの危機管理に活かしていきたいと、決意を新たにした次第です。夜郎自大は危機管理の大敵です。(小川和久)

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地方新聞記者、週刊誌記者などを経て、日本初の軍事アナリストとして独立。国家安全保障に関する官邸機能強化会議議員、、内閣官房危機管理研究会主査などを歴任。一流ビジネスマンとして世界を相手に勝とうとすれば、メルマガが扱っている分野は外せない。

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