世界的エンジニアが懸念。日本のIT業界「2つの騒動」から見えた深すぎる闇

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1月29日に発表された三井住友銀行のソースコード流出問題ですが、その経緯は思った以上に闇が深いようです。今回のメルマガ『週刊 Life is beautiful』では、著者で「Windows 95を設計した日本人」として知られ、新世代プレゼンツール『mmhmm(ンーフー)』の開発にも参加している世界的エンジニアの中島聡さんが、同ソースコード流出問題の発生した構図を明らかにするとともに、厚労省のコロナ接触確認アプリ「COCOA」のバグ問題からも日本のIT業界の「深い闇」を感じたとして、その理由を記しています。

プロフィール中島聡なかじま・さとし
ブロガー/起業家/ソフトウェア・エンジニア、工学修士(早稲田大学)/MBA(ワシントン大学)。NTT通信研究所/マイクロソフト日本法人/マイクロソフト本社勤務後、ソフトウェアベンチャーUIEvolution Inc.を米国シアトルで起業。現在は neu.Pen LLCでiPhone/iPadアプリの開発。

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三井住友銀ソースコード流出を招いた「エンジニア冷遇」と日本の社会構造(MAG2 NEWS)

先週、三井住友銀行のシステムのソースコードがインターネットに流出したことが判明しましたが、その理由は、開発を担当していたエンジニアが、自分の年収に不満を持ち、自分の市場価値をソースコードから示してくれるFindyというサービスに評価してもらうために、一般公開されているサーバー(github のパブリック・リポジトリ)にアップロードしてしまったことにあるそうです。

流出したコードの一部から、三井住友銀行以外のシステムのソースコードも流出したことが判明していますが、あるソースコードは、

  • NTTデータが銀行からシステム開発の委託を受注
  • それを子会社のNTTデータ ジェトロニクスに委託
  • そこがさらに、下請けに委託
  • その委託先から流出

という経緯で流出したことが判明しているそうです(SMBCに続きNTTデータも被害を確認、広がるGitHub上のコード流出問題)。典型的な「ITゼネコン」構造です。

ちなみに、流出を起こしたエンジニアは、Twitter上に匿名のアカウント(現在は非公開)を持っており、そこで、20年のキャリアを持つ40代のエンジニアでありながら、年収は300万円であることを嘆いていたそうです。

この人が、Twitterで韓国人を揶揄する発言をし、それが炎上するなかで、彼の Facebookアカウント、本名、githubアカウントが晒され、そこで公開されたソースコードの中に三井住友銀行向けのソフトウェアであることが分かる文言が入っていたことから、流出が判明したそうです。

Twitterでのやりとりを見る限り、本人にはまったく罪の意識はなく、Findyでの評価を受けるために、特定のフォルダーに入っているファイル全てをGithubのパブリック・リポジトリに上げてしまったそうです。

この年収から予想するに、この方は孫請け会社の社員ですらなく、大学でコンピュータ・サイエンスも勉強していない派遣社員だと思いますが、これがまさに、日本のIT業界の闇なのです。

このメルマガでも何度も指摘していますが、ソフトウェア・エンジニアとして勝負するのであれば、ITゼネコンやITゼネコンの下請けには入るべきではないし、派遣会社に登録などもしてはいけません。そこには、このような低賃金の過酷な労働環境しかないのです。

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