4千年の蓄積が活きる。中国古典に学ぶ「経営と人材育成」の心得

 

人材に関する言葉3つ

泰山は土壌を譲らず、故にその大を成す

司馬遷の著した『史記』の中に出てくる言葉です。秦の始皇帝の部下、李斯(りし)が言ったとされています。泰山とは中国山東省にある代表的な名山です。そしてこの言葉の意味は

「泰山はわずかな土くれさえも捨てないからこそ、あれほどの雄大な姿を保っているのだ」

ということです。これだけではよくわかりませんね。これは、秦の重臣が「他国出身の人間は追放してしまえ」という意見を述べた時のことです。

李斯は「他国の出身であれ、積極的に人材を受け入れてこそ、国を強大に出来るのだ」と、泰山をたとえて説きました。この意見を始皇帝は取り入れたわけです。だからこそ、短い期間で中国を統一できたのでしょう。

排外主義では国は栄えないのです。グローバルな現代に通じるところがありますね。トランプ前大統領にも聞かせてあげたい言葉です。

蓬(よもぎ)も麻中に生ずれば、扶(たす)けずして直(なお)し

またまた「荀子」からの言葉です。これは、ふつう土にへばりついて生えている蓬の草でも、麻の中に生えればまっすぐに育つのだ、という意味です。つまり、人間は、環境を選び良い交友関係に恵まれれば、それに感化されて立派な人間に育つということを言っています。

企業でも同じことが言えますね。優れた社員の多い企業で働けば、お互いが刺激をしあって、より成長します。問題は、その企業の経営者が一流かどうかですね。ですから、自らそんな企業を探し出すことも必要です。さらには、優れた人と交われば、おのずと成長します。皆さんはいかがでしょう。

善く問いを待つ者は、鐘を撞(つ)くが如(ごと)し

これも『礼記』にある言葉です。この言葉は、教師と生徒の関係を語ったものですが、上司と部下と読み替えても当てはまります。

「立派な教師は生徒の良い質問を待っていて、生徒にとっては鐘のようなものだ」

という意味です。つまり、生徒が小さく鐘をたたけば小さく鳴り、大きくたたけば大きく鳴るのが良い先生なのだと言っています。そのためには、良い質問が出来る生徒に育てなさいということです。

確かに、仕事でも上司に良い質問をする部下は、成長が速いです。したがって、上司が聞き上手になることも必要でしょう。

勝海舟の『氷川清話』の中に、坂本龍馬が西郷隆盛のことを、小さくたたけば小さく響き、大きくたたけば大きく響く人物だと言っていることが書かれています。とはいえ、なかなかそんな人はいませんね。

いかがでしょうか。中国の古典から、6つの言葉をご紹介しました。

■今日のツボ■

  • リーダーは、勝を急いで失敗をすることを忘れてはいけない
  • 経営者は私恩ばかりを売らないで、全体の利益を考える
  • 指導者は、傲慢ではいけないし、悪い欲を持ってもいけない
  • 他国からの人材を受け入れることで、国は栄える
  • 人は環境を選び、優れた交友関係を築くことで成長する
  • 上司は、良い質問が出来るように部下を育てることが必要

 image by: Shan_shan / Shutterstock.com

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ワン・トゥー・ワンコンサルティング代表。スポーツ用品業界での経験と知識を生かし、業界に特化したコンサルティング活動を続ける。
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【著者】 梅本泰則 【発行周期】 週刊

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