まるで映画。ロシア外交官家族が北朝鮮からトロッコで脱出の真相

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2月25日、ロシア外交官家族がトロッコに乗って北朝鮮国境の鉄橋を越え母国へと渡る映像が世界中に広まりました。メルマガ『宮塚利雄の朝鮮半島ゼミ「中朝国境から朝鮮半島を管見する!」』著者で北朝鮮研究の第一人者の宮塚利雄さんもこの映像には驚いたと告白。このような脱出劇が起こった事情を解説するとともに、コロナ防疫のため長引く国境封鎖がもたらしている悪影響に深い懸念を示しています。

ロシア外交官一家トロッコ脱出劇 北朝鮮からの外国人逃亡者が続出

長年にわたり北朝鮮問題に取り組んできたが、2月25日夜、ロシア外務省が暗号化メッセージアプリ「テレグラム」の公式アカウントに投稿した動画に驚き、北朝鮮にまつわる動画の中で思わず「えっ、本当?これは面白い映像だ。今までこのような動画は見たことがない」と、声をあげてしまった。

動画には女性らが乗った、スーツケースを満載した手押しトロッコを北朝鮮駐在のロシア大使館3等書記官のウラジフラフ・ソロキン3等書記官が押して、朝ロ国境の鉄道橋を越えるよう様子を映していたからである。

ロシア外務省は、2月25日「在北朝鮮ロシア大使館に勤務するロシア人外交官とその家族が手押しトロッコを使ってロシアに帰国した」と明らかにした。その中で「北朝鮮は新型コロナウイルス対策のためロシアとの国境を封鎖しており『他に手段がなかった』」とし、家族は3歳の娘を含む7人であった。

この家族は平壌から列車で32時間、バス2時間を使って国境付近に到着、その後、荷物を載せたトロッコで朝ロ国境に架かる鉄道橋(朝ロ友誼橋)を渡った。トロッコには動力がなく、同書記官が「メインエンジン」として、トロッコを1キロメートル以上押したとのこと。一家が鉄道橋を渡ってくる場面はロシア側から捉えられており、歓声をあげている場面に、北朝鮮から北朝鮮の人民が脱北する場面とは、あまりにも対照的であったために、思わず画面に引き込まれた。

北朝鮮のインフラを少しでも知っている者には、線路が4本あることに気がつくと思う。北朝鮮内は標準軌、ロシア側が広軌と規格が異なるためだ。列車を降りてからバスに2時間揺られたというからには、平壌から羅津駅まで来て、さらに豆満江駅の一歩手前の九龍坪駅まで行って、そこに用意されていた朝ロ合弁企業のトロッコに荷物と人を載せて国境の鉄道橋を越えて行ったのだろう。

北朝鮮の作業員がペンキを塗り替え、子ども用の座席を取り付けたというから、平壌を出る前からすでにこの一家のことは知らされており、急きょ臨時の手押しトロッコの改造車を仕上げたようだ。画面でトロッコのペンキの色があまりにも鮮やかなので、これは本当に北朝鮮製のトロッコかと思ったりした。

この前代未聞の喜劇のような「北朝鮮脱出劇(北朝鮮逃亡劇ではない)」に、これまで、これほど、ほのぼのとした北朝鮮関連情報がなかっただけに、非常に印象深い動画であった。

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