NTTドコモが発表した格安スマホプラン「ahamo」に加入したあるユーザーが、自身の知識不足からネットに接続できず、ドコモにクレームを入れたことをブログに書いたことで大炎上しています。なぜ、このような「悲劇」は起きてしまったのでしょうか? メルマガ『石川温の「スマホ業界新聞」』の著者でケータイ/スマートフォンジャーナリストの石川温さんが、総務省や総務大臣らによる「ケータイ値下げ」発言が大手キャリアを引っかき回したとして、「最大の被害者」が誰なのかについて厳しい意見を述べています。
ahamoターゲットではない層からのクレームに、ドコモはどう対応すべきか?
ahamoが炎上している。といっても、ahamo自体ではなく、ahamoを契約しようとしたが、うまく行かず、ドコモショップに駆け込んだ顛末を書いたブログが炎上していたのであった。
どうやら、ブログを書いた人は古いGalaxyを所有。ahamoのサイトで対応端末を確認したが「Galaxyであれば何とかなるか」と申し込んだところ、非対応機種だったようで、接続できずに困り果て、ドコモショップに相談するも、まともに取り合ってくれなかったという。ネットでは「ネット専業だから安いのを理解しろ」といった声であふれている。
NTTドコモとしては、企画段階ではデジタルネイティブを狙ったブランドにしたかったはずだ。ネットを使いこなし、買い物やデリバリー、銀行などもスマホでちゃちゃっとやってしまう人をイメージしていたはずである。
これまで家族まるごとNTTドコモ契約で、自分で通信料金を支払っていなかった若者が、自立して自分で通信料金を支払わなくていけなくなるという時の「囲い込み策」としてahamoを投入したかったはずだ。
あくまで他社に流出されないためのブランドであり、NTTドコモとしてはスモールスタートさせたかったのではないか。もちろん、困ってドコモショップに駆け込むシニア層は相手にするはずもなかったことだろう。
それはKDDIもソフトバンクも同様なはずだ。KDDIはCircles Life社と提携し、デジタルネイティブを狙うため、MVNOとしてスタートするつもりだった。povo labのようなユーザーや企業と一緒にトッピングを作るという考え方も、小さくスタートするからこそ、やりやすいはずだ。
どのキャリアもひっそりと始めたかったはずが、昨年末の武田良太総務大臣による「メインブランドで値下げをしなきゃ意味がない」発言によって、ahamoもpovoもLINEMOも一気に表舞台に引きずりだされ、大衆の目に触れることとなった。だからこそ、冒頭のような、本来、ターゲットにしていなかった顧客が路頭に迷いキャリアショップに殺到することになったのだろう。
本来、キャリアがやりたかった商品やサービスを、総務大臣や総務省が引っかき回し、ターゲットとは異なる層に間違ってリーチしてしまうことが、ユーザーにとって望ましいことなのか。
今回の騒動で、最大の被害者はユーザーである国民ではないのか。
「対応機種がよくわからない」というユーザーは、そもそもahamoなんかに目もくれず、キャリアショップでしっかりと対応してもらったほうが幸せなはずだ。
これまで総務省は「通信料金と端末の完全分離」が、さも正義のように語ってきたが、端末とサービスを分離することは、こうした何もわからないユーザーが混乱するだけのように思える。
菅政権の目玉政策である「携帯電話料金の値下げ」の成果を、オンライン専用プランに押しつけていいものなのか。
「サービスを受けるには、それなりのコストがかかる」という点を、しっかりと国民に理解してもらう必要があるだろう。
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