社労士が解説。企業は従業員にワクチン接種を命令できるか?

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深田GL 「そういえば、今月のお客様への請求書と同送で、ワクチン接種の注意事項を入れようと思うんだ」

E子 「あ、ボスから指示されている案内のことね」

新米 「どんな内容なんですか…?」

深田GL 「一言で言ってしまうと、『接種の有無は、あくまでも従業員本人の自己判断に任せるべきだ』ってことかな」

新米 「会社が接種命令するのは良くないんですか?」

深田GL 「そういうことだね。会社が、接種の有無のいずれかを推奨したり強制したりした場合には、その結果生じた従業員の損害について賠償責任を負う可能性が出てくるから要注意だってことだ」

E子 「従業員に接種を勧めたり、強制したりして、アナフィラキシー等が発生した場合には会社に対し損害賠償請求の可能性が出てくるし、アナフィラキシーがあり得るので、接種を受けないように勧めた場合でも、新型コロナに感染して重症や中等症になったら会社に対し損害賠償の可能性が有るのよね」

新米 「受けた方が良いと言ってもダメだし、受けない方が良いというのもダメってことですかぁ?」

深田GL 「そうなんだ。民法第709条の不法行為による損害賠償では、『故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。』とあるからね」

E子 「つまり、何も言わないに限るってことになるわけだけど、なかなか難しいところよねー」

新米 「ふーん、そういうものなんですか。じゃぁ、営業や外回りしている人は受けることなんて会社がいうのもご法度ってことなんですね」

深田GL 「うん、そういうこと。お得意先様に安全性を売り込むために、接種を強制することもしない方が良いってことだね」

E子 「接種のために遅刻・早退・欠勤しても会社は一切関与する必要はなくて、接種のために年次有給休暇を使いたいとの申し出があった場合は、年休を認めればよいとなるわけね」

大塚T 「そりゃ、年休の使い道は自由ですものね」

E子 「そう。そして、逆に、会社が接種のための年休取得を認めない場合は、今度はまた接種の機会を失ったとして、後に損害が発生したならば、請求される可能性があり得るってこと」

新米 「うーーん、色々とややこしそうですね」

深田GL 「ワクチン接種に関しては、『何もしない、何も関与しない』に限るんだ」

大塚T 「厚生労働省の『新型コロナワクチン接種についてのお知らせ』には『職場や周りの方などに接種を強制したり、接種を受けていない人に差別的な扱いをすることのないようお願いいたします。』と記載もありますね」

新米 「なんやかんやと細かなことまでホームページに書かれているんですねー」

E子 「そう、『あくまでも、接種の有無は、従業員本人の自己判断に任せるべき』です」

image by: Shutterstock.com

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