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稲盛和夫が社員を「金の人材」に変身させるため毎日かけた魔法

企業の存続や成長は「成果」にかかっていると言っても過言ではありません。今回のメルマガ『戦略経営の「よもやま話」』では著者の浅井良一さんが、ドラッガーと稲盛和夫の言葉を引いて企業を成功に導く成果中心のマネジメントについて紹介しています。

成果が実現する場所 ミッションの共有

“成果中心”であるマネジメントにおいては「“成果”が実現され“収益”が得られる場所は“外部(市場)”である」ので、私たちが、顧客、社会の欲求・要望を満たすことで初めて実現されます。さらに、変化とグローバルな競争のなかで「一番であるもの(こと)」「今までになかったもの(こと)」という条件が付加されます。

いつもいつも繰り返し、またしつこく言うのですが、企業(組織)の存続・成長は、ひとえに市場が求めている「欲求に応えて評価され対価が支払われる」ことによって実現されます。これもまたしつこく言うのですが、場所や部分といった選択条件のもとで「一番になる」「今までになかった」を適えることで実現するのです。

場所や部分といった“選択領域”において「一番である」「今までになかった」を“変化”の中で実現させるのが“成果中心の戦略”です。他と同じことをしていては、競合には勝てません。戦略としては「違ったこと」「新しいこと」において、何らかの要因によって自身の“強み”が活かせることに集中するのです。

何時ものようにドラッカーから引用を行います。今回は“おさらい”も兼ねて一番基本のことから掘り起こして行きます。

事業の定義は「目標に具体化」しなければならない。そのままでは、いかによくできた定義であっても、優れた洞察、よき意図、良き警告にすぎない。

目標設定においても、中心になるのは“マーケティング”と“イノベーション”である。なぜなら『顧客が対価を支払うのは、この二つの分野における成果と貢献に対して』だからである。

マーケティングの目標設定に関して、興味深いことを言っています。

古代の偉大な科学者アルキメデスは「立つ場所を与えてくれれば世界を持ち上げて見せる」と言った。アルキメデスが言った「立つ場所が、集中する分野」である。集中することによって、はじめて世界を持ち上げることができる。したがって“集中する目標”は、基本中の基本というべき重大な意思決定である。集中についての目標があって初めて「われわれの事業は何か」との問いに対する答えも、意味のある行動に換えることができる。

「集中する目標」こそが、戦略なのです。

「われわれの事業は何か」という“立つ場所”を明確にしなければ“集中”できず「世界を持ち上げる」ことなどできないのです。そこで必須のとなる行為が「ミッション(使命)の宣言」であります。真っ当な世にある事業で“ミッション(使命)”を果たしていないものはなく、その意味を確かに意識することで“強み”がつくられます。

京セラの稲盛さんが、前職でセラミックに取り組んだときの話で。後に京セラの創業メンバーとなる人が入ってきたとき、意欲を高めるために“毎晩”こんな話をしてしていたそうで紹介します。

「皆さんは、日がな一日、粉をこねたり、形をつくったり、焼いたり、削ったり、単調でつまらない仕事だと思っているかもしれませんが、いまやっている研究は、学術的に意義のあるものです。東大、京大でもこの酸化物の焼結という実用研究には手を出していません。世界中でも1、2社しか取り組んでいない“最先端の研究開発”です。これが成功すれば『さまざま製品に使われ、人々の暮らしに大いに貢献する』ことになります。そんな社会的に意義ある研究開発が成功するかしないかは、皆さんの日ごろの働きで決まるのです」

“成果中心”のマネジメントを行う企業経営者に共通するのは、自社の「世界に“貢献できる”また“する”ミッション」を、経営者が明確かつ頻繁にあらゆる機会をとらえて語り掛けることです。

ところでこの経営者の働きかけなのですが、何も現代経営学でのものではなくて、古来有能な指導者が立派に統治を行う普遍的な術です。その普遍性であることを知るために、古典「マキャベリ」から聞きます。ここで述べている言葉はその時代のことなので、軍隊は企業とし、兵士を社員もしくは従業員としていただきます。

軍隊の指揮官でさえ、話す能力に長じたものがよい指揮官になれる。単に軍規を守られるだけならば、大した能力は必要ない。そして、それだけ、多数の人間の集合体である軍隊を手中に収めることはできない。むやみに厳罰でのぞむよりも、彼らに向かって説得したり鼓舞したりしたほうが、効果が大きいのである。それゆえ、自分の思うところを充分に伝えることのできる話術が必要とされるのだ。

金銭で傭うことによって成り立つ傭兵制度が、なぜ役立たないのかの問題だが、その理由は、この種の兵士たちを掌握できる基盤が、支払われる給金以外にないというところにある。これでは、彼らの忠誠に期待するには少なすぎる。彼らがその程度のことで傭い主のために死までいとわないほど働くと期待するほうが甘いのだ。だから指揮官に心酔し、その下で勇敢に立ち向かうほどの戦闘精神は、自前の兵士(同志)にしか期待できない。

実に、稲盛さんが成していたことは「マキャベリ」が唱える指揮官(経営者)が、兵士(社員)をして“勇敢に立ち向かうほどの戦闘精神”を持つ人材へと変身させ得る普遍的な働きかけなのです。「自分たちを守る」「一番になる」「他に貢献する」「誰もしなかったことをやり通す」「成長する」の“価値観”こそが源泉力なのです。

image by: Shutterstock.com

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戦略経営のためには、各業務部門のシステム化が必要です。またその各部門のシステムを、ミッションの実現のために有機的に結合させていかなければなりません。それと同時に正しい戦略経営の知識と知恵を身につけなければなりません。ここでは、よもやま話として基本的なマネジメントの話も併せて紹介します。

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【著者】 浅井良一 【発行周期】 ほぼ週刊

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