挙句の果てには「私はレイプされたの!OKしていないんだから。警察に通報するわよ!!」と脅してきたのです。拓也さんに思わぬ落とし穴が待っていました。
「そもそもリモート婚活で知り合ったので、『男女の仲』だと思い込んでいました」
拓也さんはそう言いますが、レイプが成立するのは他人同士の場合です。恋人同士なら問題ありません。しかし、シャイな拓也さんは「好きです。付き合おう」と切り出したことはないのです。彼女が「交際はしていない」と翻意してきたら困ります。
そして「ホテルに行くことに同意した=性交渉に同意した」というのはあくまで拓也さんの目線です。もし彼女が「ホテルに行くことに同意したけれど、性交渉には同意していない」と言い出したら厄介です。
一般論として、もしカップルの行き先がラブホテルなら、性交渉ありきの密室なので「ラブホテルに行くことに同意したのに性交渉に及ぶつもりはなかった」と言うのは無理があります。その場合は拓也さんの意見に軍配が上がるでしょうが、残念ながら今回の行き先はシティホテル。必ずしも性交渉をだけをする部屋ではないので、ホテルに行く同意=性交渉をする同意」と結びつけるのは難しいのです。
とはいえ、拓也さんは腕力にものを言わせて、彼女をてごめにしたわけではありません。しかし、彼女が抵抗できるほどの力だったかどうか分かるのは彼女自身だけ。「怖くて何もできなかった」と口にした場合、どうなるでしょうか? 抵抗できない女性に対して、力ずくで押さえつけて肉体関係を迫ったことにされても不思議はありません。「彼女が露骨に嫌がれば、無理強いするつもりはなかったんです」と、拓也さんは弱った顔で言います。
しかし、彼女は本気で拓也さんを強姦魔に仕立てたいわけではなく、望んでいるのは交際の継続、そして結婚でしょう。そこで私は「彼女は近藤さんの気持ちを知りたいのでしょうが、ここまでこじれると何を言っても無駄でしょう」と助言しました。拓也さんの「不幸中の幸い」は、自宅や職場の住所を知られていないことです。拓也さんは散らかっている部屋を見られたくない一心で、彼女を自宅に上げませんでした。
もし、彼女が拓也さんの住所を知っていた場合、直接訪問したり、手紙を送ったり、裁判所に調停を申し立てたりする危険性があります。しかし、彼女が知っているのは拓也さんのLINEだけ。携帯番号やメールアドレスはもちろん、自宅の住所や勤務先の会社名を教えていません。私が「心を鬼にしてブロックしてみては?」と提案すると、拓也さんはスマホでLINEを開き、私の目の前で彼女のアカウントに「ブロック」ボタンを押したのです。
残念ながら、不特定多数の男女が集まる場にはストーカー気質の人間が混在しています。それは婚活アプリも例外ではありません。拓也さんの脇の甘さが招いた結果ですが、このような粘着質の人と結婚しても上手くいかないことは目に見えています。早いタイミングで「おかしい」と気付き、安易に妥協せず、彼女と別れたのは、今となってみれば正解だったのでしょう。
私の相談者(結婚期間0~3年で離婚した20~30代の男女)に対して、「はじめから問題がある人だった=性悪説」「結婚生活のなかでおかしくなった=性善説」のどちらに該当するかを聞き取りしたところ、前者は73%、後者は27%でした。
「性善説」の場合、結婚期間の「途中で」、少しずつ2人の足並みがそろわなくなるのですが、どんな相手でも一定の確率で起こり得ることです。そのため相手選びの段階、婚活の最中に将来の危険を察知することはとても難しいのです。
一方で「性悪説」の場合、最初から問題を抱えた相手です。そのため、間違った相手を選ばないよう予備知識を得ることが大事です。
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