恒例行事と化した「がんの10年生存率」報道から感じる構造的な大問題

shutterstock_1135032728
 

国立ガン研究センターが2007年と2008年にがんと診断された患者の「10年生存率」を公表し、各メディアが伝えました。メルマガ『uttiiの電子版ウォッチ DELUXE』著者でジャーナリストの内田誠さんは、東京新聞に掲載された「10年生存率」の記事を過去のものも含めチェック。今年の集計は過去最大規模という違いはあるものの、がん治療は進化し続けているとの注釈とは裏腹に劇的な変化は見られず、毎年同様の数字が公表され、記事になることに疑問を呈しています。

がんの「10年生存率」について新聞はどう報じてきたか?

きょうは《東京》から。各紙報じていますが、がんの「10年生存率」について、過去記事を当たってみましょう。《東京》の過去記事検索で6件ヒットしました。まずは《東京》2面記事の見出しと【セブンNEWS】第3項目の再掲から。

がん10年生存率59.4%
初の全国大規模調査
国立がん研発表

国立ガン研究センターは、がんと診断された患者の「10年生存率」を公表。平均で59.4%だった。240病院24万人対象の国内最大規模の調査によるデータ。前立腺がんでほぼ100%、乳がんで90%近かったが、小細胞肺がん9.1%、膵臓がん6.5%。

以下、記事概要の補足。2008年にがんと診断された患者23万7892人について、がん以外の死因の影響を除いて算出したもの。膵臓がんの生存率の低さは「早期発見が難しい」ため。

また肝臓がんなどでは5年が経過した後でも生存率が低下していた(肝細胞がんで44.7%から21.8%に。肝内胆管がんで18.9%から10.9%に。)ので、これまで「診断からの5年が治癒したかどうかの目安にされる」ことが多かったが、5年を超えて「長期観察する必要性が示された」としている。

●uttiiの眼

記事は、国立ガンセンターが、このデータは2008年、つまり13年も前にがんと診断され、治療を受けた人についてのものだという点を強調していることを伝えている。「最近開発された治療法も使われておらず、参考として考えてほしい」(若尾文彦がん対策情報センター長)と。

生存率はどんどん高まってきているのだと思う。ただ、新型コロナ禍による医療の逼迫乃至崩壊状態が大阪などで生じている。統計数字を動かすような影響に発展するとすれば大変なことだが、その結果が出るのはずっと先のことになるのだろう。

print
いま読まれてます

  • 恒例行事と化した「がんの10年生存率」報道から感じる構造的な大問題
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け