恒例行事と化した「がんの10年生存率」報道から感じる構造的な大問題

 

【サーチ&リサーチ】

*実は、「10年生存率」は度々発表されていて、記事を総合すると、2016年と2017年、2018年、2019年、そして2020年にも出されている。データベースでヒットした最初は2017年。4年前の記事だった。

2017年2月16日付
「国立がん研究センターは、2000~03年にがんと診断された人の10年後の生存率は58・5%だったと16日付で発表した。10年生存率の算出は昨年に続き2回目で、0・3ポイントとやや上昇した。」という。

*対象となる患者が診断を受けた年次、その数がまちまちなので、生存率が上昇したと評価することが非常に難しくなっている。17年の記事が伝えた「10年生存率」の調査は「全国の20施設で診断された約4万5千人」で、今回の大規模調査とは単純に比較できない。

*2018年公表の「10年生存率」は55.5%。2001年~04年に「全国20施設で診断、治療を受けた約5万7千人のデータを集計した」もの。

*2019年公表の「10年生存率」は56.3%。2002年~2005年に「全国20施設で診断、治療を受けた約7万人のデータを集計した」もの。

*最後は2020年公表の「10年生存率」で、57.2%。2003年~06年に診断された「全国約20のがん専門病院で診断、治療を受けた約8万人を集計した」もの。

●uttiiの眼

今年の「10年生存率」は対象患者数も圧倒的に多く、施設数も多いので、最も信頼できる数字とは言えると思う。しかし、毎年出す必要がある数字なのかどうか。こういうものが恒例行事のように出されるについては、構造的な問題がどこかに潜んでいるのではないかと疑いたくなってくる。

記事の中には、必ずと言っていいほど、数字は過去のものであり、その後のがん診断・がん治療は進化し続けているというような記述があり、免疫チェックポイント阻害剤のオプジーボの登場やゲノム医療のことなどが書き添えられている。

肝心の「10年生存率」の数字は少しずつ上がっているようにも見えるが、新薬や新治療法の登場にもかかわらず、劇的な上昇には至っていない。医療は間違いなく様々な面で進歩を遂げつつあるが、日本全国にその恩恵が行き渡っているわけではないということか。

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ニュースステーションを皮切りにテレビの世界に入って34年。サンデープロジェクト(テレビ朝日)で数々の取材とリポートに携わり、スーパーニュース・アンカー(関西テレビ)や吉田照美ソコダイジナトコ(文化放送)でコメンテーター、J-WAVEのジャム・ザ・ワールドではナビゲーターを務めた。ネット上のメディア、『デモクラTV』の創立メンバーで、自身が司会を務める「デモくらジオ」(金曜夜8時から10時。「ヴィンテージ・ジャズをアナログ・プレーヤーで聴きながら、リラックスして一週間を振り返る名物プログラム」)は番組開始以来、放送300回を超えた。

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【著者】 内田誠 【月額】 月額440円(税込) 【発行周期】 毎週 月・火・水・木・金曜日(祝祭日・年末年始を除く) 発行予定

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