保守派から「安倍に再登板させろ」の大合唱。自民全敗スガ首相の本音は

 

まず4月12日。菅首相が、バイデン米大統領に促され、温室効果ガスの削減目標を高く掲げたことから、今がチャンスとばかりに原発の新増設やリプレース(建て替え)をめざす自民党の議連が発足、会長の稲田朋美衆院議員に請われて、安倍氏は顧問への就任を引き受けた。

4月20日、安倍氏は自民党憲法改正推進本部の最高顧問に就任した。改憲に消極的な菅首相を意識しているのかもしれない。目下、自民党が急いでいるのは国民投票法改正案の成立だ。大型商業施設への共通投票所設置などを盛り込んだ改正案が国会に提出されているが、野党はテレビCMの規制を盛り込むべきだとして、反対している。

4月22日、安倍氏は「保守団結の会」なる党内右派グループの会合に出席、持論の国家観をぶち上げたあと、民間の改憲派グループが開いたシンポジウムにパネリストとして参加、「新しい薬が大変よく効いている」と体調回復をアピールし、安倍政権の間は憲法改正の議論をしないと言ってきた立憲民主党の枝野幸男代表を話のタネにして、「もう首相じゃないから議論しろよ」と空鉄砲を放ってみせた。

こうした活発な動きを歓迎する声は、出身派閥の細田派内では、とくに強いようだ。同派閥に戻って「安倍派」を旗揚げしてもらい、それをきっかけに、派をあげて安倍氏の総理返り咲きへ本腰を入れる。そんなシナリオを描いているのかもしれない。

気力体力ともに自信を取り戻した安倍氏としては、“選挙不敗”の神話をひっさげて、“選挙全敗”の菅首相に取って代わる誘惑にかられやすい局面だろう。

だが実際のところ、どうなのか。ワクチン接種が遅ればせながら菅首相の言う通りに進み、新型コロナの感染拡大が落ち着いて、東京五輪・パラリンピックも予定通りに開催、どうにか混乱なく終えることができれば、菅首相がもくろむように、総裁選前の解散・総選挙も可能だろう。そして、想定より選挙結果がよければ、すんなり総裁に再選される公算が高まる。

衆院は定数465で、自民党の現有議席は278。過半数の233を45も上まわる議席を有している。これと同じレベルの結果はとうてい望めない。許容できる議席減の目安はどの程度なのか。ある評論家は30議席減、すなわち248議席がボーダーラインと指摘する。50議席減という政権寄りの評論家もいるが、それだと過半数割れの228議席ほどにハードルが下がる。意図的に達成しやすい相場観を吹聴しているとしか思えない。

逆に、コロナの勢いがおさまらず、東京五輪が中止、または開催できても火に油を注ぐように感染が拡大する場合、菅内閣の支持率が急落するのは目に見えている。解散・総選挙のタイミングを失い、菅首相では選挙を戦えないとして、菅降ろしの機運が一気に高まる。総裁選で選挙の顔を決めようという空気になるだろう。

菅氏は決して降りることはあるまい。さてその時、安倍氏はどうするか、である。自分のピンチに総理をつとめてくれた菅氏を、どんな状況であれ徹底して支援するほどの器量はなさそうだ。盟友、麻生太郎氏に背中を押され、党内の安倍シンパから再再登板コールが湧き上がれば、権力の虫がうずきはじめるのではないか。

安倍氏と麻生氏は「東京五輪が終わるまでは支える」と菅首相に伝えているといわれる。つまりそれは、五輪後は自由にやるという宣言でもある。総裁は「連続3期9年」が自民党のルールだが、連続でなければ、何度でもなれるということだ。桂太郎は3回、伊藤博文は4回も総理大臣になった。

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