保守派から「安倍に再登板させろ」の大合唱。自民全敗スガ首相の本音は

arata20210506
 

コロナ禍にどれだけ多くの庶民が喘ごうが、この国の為政者たちは権力の万能感や自己保身にしか興味がないようです。今回のメルマガ『国家権力&メディア一刀両断』では元全国紙社会部記者の新 恭さんが、二度も政権を投げ出した安倍晋三氏の再再登板を期待する保守系議員たちの存在と、彼らに呼応する動きを見せる安倍氏を強く批判。さらに、長すぎた「安倍一強」が招いた自民党内の人材不足を指摘しています。

“選挙全敗”の菅首相を安倍氏は支持か、それとも再再登板か?

安倍前首相は再再登板を狙っているのだろうか。最近の活発な政治活動を見て、自民党内に待望論が出ているようだ。体調悪化による二度目の辞任からまだ8か月あまり。権力に未練がましいことは、ふつうならしない。

たしかに、菅首相はお世辞にも新型コロナ対策に成功しているとはいいがたく、最近では“ワクチン失政”という批判も飛び交っている。だが、コロナ危機の深刻化も、もとをただせば、安倍前首相の初動が鈍かったからではないか。

なのに、自分の体調が回復するや、安倍氏は色々な会合に首を突っ込み、やれ憲法改正だ、原発推進だと息巻いている。菅首相の悪戦苦闘など、いまや他人事のようなふるまいである。

病いのためとはいえ、自らの意思で歴代最長政権を終えたのだ。ひとまず静かに書を読むなりして閑居し、英気を養いつつ、知見を高めておくのが、後進に示すべき奥ゆかしさだろう。

北海道、長野、広島で行われた4月25日の補欠、再選挙で、自民党は1人として当選者を出せなかった。それだって、なにも菅首相の不人気のせいだけではない。モリ・カケ、桜を見る会など数々の疑惑を通じ、権力の私的乱用という腐敗のタネをまいたのは、安倍氏である。

衆議院北海道2区は、ワイロが発覚した吉川貴盛元農林水産大臣の議員辞職にともなう選挙で、自民党は候補者を立てることすらできず、不戦敗となった。参議院長野選挙区は、コロナで急死した羽田雄一郎氏(立憲)の「弔い合戦」とあって、全く歯が立たない。

最後まで接戦を演じ、ただ一つ勝利の芽があったのは、参議院広島選挙区の再選挙だけだったが、河井克行、案里夫妻が残した大規模買収事件のキズは想像以上に深かった。2019年の選挙(改選2)で、安倍自民党は現職の溝手顕正氏に加え、河井案里氏を立てたため、広島県連は、溝手氏を推す広島県議会議長、中本隆志氏ら主流派と、元議長の桧山俊宏氏ら非主流派に分裂して戦った。党本部から河井陣営に振り込まれた1億5,000万円という破格の選挙資金で、河井案里氏と夫、克行氏(元法相)は買収に走り、溝手氏は落選、河井夫妻には司直の手が及んだ。

河井夫妻からカネを受け取った政治家は、わかっているだけで40人いる。内訳は三原市長、安芸太田町長、広島県議14人、広島市議13人、その他の市議・町議11人だ。40人のうち35人は買収の意図を感じたと証言している。陣中見舞いだの、当選祝いだのと思っていたというのは少数にすぎない。それでも多くが議員を辞めずに居座っている。

なんという退廃だろうか。これで、自民党に投票してくれと言われ、有権者が応じるはずがないではないか。そして、その原因をつくった張本人が誰かと言えば、河井克行氏の能力を買い、総理補佐官にし、やがては法務大臣にまで取り立てた安倍前首相であろう。河井氏は、何をしても許されるような錯覚に陥っていたにちがいない。最高権力者に特別扱いされたがゆえに、罠にはまったのだ。

にもかかわらず、安倍氏は節操のない再再登板に期待を寄せる保守系議員たちの動きに呼応し、悦に入っているように見える。このところの動きをまとめておこう。

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