菅首相は安倍・麻生連合にどう対処するだろうか。安倍氏、麻生氏の支援がないと、菅氏は苦しい。自民党衆参両院の約4割を占める最大派閥の細田派96人と、第二派閥の麻生派53人が、自分の派閥を持たない菅氏の基盤になっていたのは確かだ。
菅続投の条件として、麻生氏は幹事長の交代を突きつけているともいわれる。二階派の膨張を苦々しく思っているのだろう。それを菅首相がのむと二階派が離れる。また、二階を捨てたところで、安倍・麻生の支持を得られるかどうかは、わからない。安倍・麻生につくか、二階の寝技を頼りとするか。そのような厳しい選択を菅首相は迫られる時がくるかもしれない。
総裁候補の一人、岸田文雄氏はどうだろうか。参院広島の再選挙で指揮を執ったものの結果を出せなかったため、ますます旗色が悪くなっている。安倍前首相からの禅譲を期待しながら裏切られ、貧乏クジばかりひかされてきた岸田氏を、今度こそ安倍、麻生氏が支援するという想像も、しにくくなった。
こう考えてくると、東京五輪をうまく乗り切れない場合には、いよいよ安倍氏の再再登板が現実味を帯びてきそうな気がする。だが、モリ・カケ、桜を見る会、いずれの疑惑にも、安倍氏はきちんと説明を尽くしていない。その気もない。そんな前首相の再再登板を国民が歓迎するだろうか。
おりしも、安倍氏は5月3日、BSフジの報道番組で、再再登板について否定的な発言をした。
「私が突然、病気のために辞任した後、菅首相は大変だったと思う。この難しいコロナ禍の中で本当にしっかりやっている」「昨年、総裁選をやったばかり。その1年後にまた総裁を代えるのか。自民党員なら常識を持って考えるべきだ」「一議員として全力で支えることが私の使命だ」
いかにも菅首相を思いやっているようだが、今の段階で、私は再再登板すると言うはずがない。そもそも「一議員として全力で支える」という姿はどこにあるのか。議連の会合に出席し、役職にもついて、さかんに復活の意思をアピールしているだけとしか筆者の目には映らない。
安倍前首相の再再登板を望む声が出ること自体、人材不足の党内事情を物語っている。安倍一強が長く続いたために、自由闊達な論議のなかから人を育てる風土が失われていったのだろうか。
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