あまりにも使いにくいシステムだとの市民の声を受け、架空の市町村コードや接種券番号でも予約できるというシステムの脆弱性を発見したのです。これはどのメディアであろうと、ジャーナリズムである限り、見過ごすことのできない事柄で、当然ながら罪に問われることまで覚悟して検証している訳です。米国のメディアなどは、刃物を持って空港の検査場を通り抜けてみせるなど、かなりの頻度で政府をチェックしていますが、罪に問われたとは聞かない話です。
まして、今回のケースではマスコミはシステムの脆弱性を検証した後、すぐに予約をキャンセルし、その過程を報道していますし、架空予約をしないようとの防衛省のコメントも掲載しています。よほどの独裁国家か発展途上国でない限り、マスコミが罪に問われることはないケースです。
関連して、自衛隊OBなどからマスコミへの非難が噴出することになりましたが、これも問題ありです。非難の声は日頃からのマスコミ嫌いに発しているのですが、それまでのマスコミ報道がどうあれ、国家システムを健全に機能させる上でのジャーナリズムの位置づけという角度から、とらえてもらいたいと思いました。産経新聞だって、気がつけばチェックしていたかも知れないのです。
今回のケースでは、自衛隊の将官OBが非難を口にするほどに、日本の国家の後進性だけでなく、自衛隊の脆弱性を世界にさらしている面があることは、相手の立場から見れば明らかです。挑発すれば逆上する将軍提督が多い軍隊は、罠にはまりやすく、御しやすいとみられるのです。防衛省・自衛隊と関わりの深い立場としては、OB諸氏が深呼吸をして、冷静な思考を取り戻すことを期待せずにはいられません。(小川和久)
image by: 本屋, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons