オカルトと笑うなかれ。心理学者が説く虫の知らせやテレパシーのこと

 

【同時性の謎】

20年以上も前のことになりますが、日本における超心理学の権威である大谷宗司先生にお会いしてお話を伺う機会に恵まれたことがありました。

先生は当時、防衛大学校で教鞭を取っておられました。

その際に先生は、「ESP現象が実在すること自体は多くの研究により実証されているけれど、情報を伝達するメディアが何であるのかが分からない。電磁波でも重力波でもない。何しろ、ESP現象はまったく同時に起きる。時間差が無い」と語っておられました。

かつてのソヴィエト連邦では、超心理学の研究が重要視されており、原子力潜水艦などを使って、地球の裏側の、しかも海の底で起きた現象が、レニングラードで同時に検地されるといった実験が行われていました。

何とも不可思議なことですが、こうした、かなりの距離を置いて行われた実験においても、ESP現象は「同時」に起るのです。

ESP情報を伝える未知のメディアは光の速度をも超える何物かなのです。

不勉強な私は、その後の研究に関わることも無かったので、先生のおっしゃった「同時性」についての疑問をそのまま放置していました。

しかし、最近になり「量子コンピュータ」が話題となるにつれて、いわゆる「量子もつれ(quantum entanglement)」という現象が論じられるようになりました。

これに触発されて調べてみると、既に、何人かの天才的な研究者が、これを用いて「ESP現象」についての仮説を立てていたことを知ったのです。

二つのペアを組んだ量子は、どんなに離れていてもある意味でつながっていて、その相互関係は「同時」に変化するというのです。

たとえ、宇宙の反対の果てにそれぞれの量子が置かれていても、それらはつながっていて、両者は同時に状態を変えるというのですから驚きです。

アインシュタイン(Albert Einstein 1879~1955)も、こうした「量子もつれ」を「不気味な遠隔作用」と呼んだほどです。

しかし、この「量子もつれ」こそが、ESPに関する時空を超えた「同時性」の問題をも解決するかもしれません。

【量子脳理論】

実際、ドイツの神経科学者であるワッカーマン(J. Wackermann)らが2003年に発表した論文において、彼らが脳波とfMRI(機能的磁気共鳴画像法)を指標に行ったテレパシー実験の結果(ペアを組んだ被験者の間で、脳波の同期が生じた)を説明するのに「量子もつれ」を仮説として提唱しています。

その後、米国のラディン(Dean Radin)も、隔離された二人の人間の脳波に「相関関係」が生じるという実験結果(2004)を説明するのに、「量子もつれ」のような現象が脳という巨視的な物体においても生じるという可能性について述べています。

21世紀になり、ESP現象と量子力学(quantum mechanics)の関係が指摘されるようになった背景には、2020年にノーベル物理学賞を受賞したロジャー・ぺローズ(Sir Roger Penrose 1931~)が1989年に著わした一冊の本『皇帝の新しい心(The Emperor’s New Mind)』の影響が大きいと考えて良いでしょう。

この本の中でペンローズは、「量子脳理論」を提唱しました。

脳内の情報処理には「量子力学」が深く関わっており、人間の高度な「意識」も神経細胞内で生じる量子レベルの現象から発生する、と述べています。

ペンローズによるこの革命的な学説は、意識やESP現象だけでなく、死後の魂の連続や「生まれ変わり」といった現象についても説得力のある説明を与えてくれますが、あまりに魅力的であると同時に情報量も多いので、紹介するのは次の機会に譲りましょう。

今回は、ESPと「量子もつれ」の問題に限りたいと思います。

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