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カギは病院の「初診日」障害年金で得する方法を年金のプロが指南

事故や病気によって障害を持った方のために備えられている「障害年金」。これも国民年金から支給される障害基礎年金と、障害厚生年金の2種類に分かれていますが、実は病院の「初診日」で年金額に差が出ることをご存知でしょうか。今回の無料メルマガ『年金アドバイザーが教える!楽しく学ぶ公的年金講座』は、著者で年金アドバイザーのhirokiさんが2つの障害年金の違いと、年金額が手厚くなるための条件などを事例で詳しく紹介しています。

初めて病院に行った日が厚生年金加入中だと障害年金額がとても手厚くなる

障害年金には国民年金から支給される障害基礎年金と障害厚生年金があります。何が違うかというと、初めて病院に行った日(初診日)に国民年金のみの加入中だったか、もしくは初診日が厚生年金加入中だったかで分かれます。初診日が厚生年金加入中にないなら、障害基礎年金になると思って間違いないです。なので何気に病院行ってみた初診日というのはその後の運命を決める最重要な日とも言える。

この両者で結構違うと感じるのは、年金額の点です。まず、障害基礎年金は2級以上の障害等級の人でなければ受給する事は出来ませんが、仮に2級であれば年額780,900円(月額65,075円)の定額となります。1級の人はその1.25倍の976,125円(月額81,343円)となる。

なお、令和元年10月から始まった消費税対策による、年金生活者支援給付金月額5,030円(1級は6,288円)も加算されるようになりました。ちなみに18歳年度末未満の子が居る場合は、一人につき224,700円が障害基礎年金に加算されます(3人目以降は74,800円)。障害等級2級というのは活動の範囲が概ね室内(病院内や家の中)に制限されるような人が該当します。1級はベッド周辺に制限されるような状態。

障害認定基準(日本年金機構)

こうして見ると障害基礎年金は2級以上の人が貰うものであり、そして年金も定額なのでなかなか厳しい年金という感覚はありますね。じゃあ2級以上だから、働けない状態でなければならないかというと必ずしもそうではないです。傷病によっては良くなってくる事も多いので、2級でも働いてる方は30%強くらいいます(1級は20%弱くらい)。働くなら障害年金貰ってはいけないという制限は無いので、働くかどうかはお医者さんと相談したりしながら本人次第です。働く事で障害年金が停止される事は無いですが、症状が改善したと判断されると障害年金の更新の時に等級が落ちて支給されなくなったり金額が下がるという事はあります。

では次に障害厚生年金はどうか。障害厚生年金は1級から3級まであり、3級未満で症状が固定してる人には障害手当金という一時金(最低1,171,400円)もあります。障害手当金は実務上はほとんど見かける事は無いです^^;非常に稀。

さて、障害厚生年金は3級まであり、一時金まで用意されてるので障害基礎年金よりも受給範囲は広いです。

年金額は過去の給与に比例したものなので、人それぞれ給付額は異なります。ただし、過去にほとんど厚生年金期間が無い人もいるので(入社早々に障害になったとか)、最低でも300ヶ月間加入したものとして計算して支給されます。ある程度まとまった保障をしないと病気や怪我で働く事が困難な人への生活保障として成り立たないからですね。

さらに2級以上は国民年金からの障害基礎年金も同時に支給されるので、給付が高くなります。3級には障害基礎年金は出ませんが、最低保障金額として585,700円は保障される。また、65歳未満の生計維持してる配偶者が居れば配偶者加給年金224,700円も加算される。

このように障害基礎年金のみの場合と、障害厚生年金の場合とではかなり給付に差があります。初めて病院に行った日(初診日)が国民年金のみの時だったのか、厚生年金加入中だったのかで変わってくるので、在職中に病院に行ける人は行っていたほうがいいかもしれませんね。在職中に体調不良が続き、会社に迷惑がかかると思って病院に行くのを先延ばしにして、退職後に病院に行こうと思ってる人は思い止まったほうがいい。

さて、障害基礎年金のみと障害厚生年金が貰える場合とでは大きな違いがありますが、少し障害厚生年金事例を考えてみましょう。

1.昭和46年4月16日生まれの女性A美さん(今は50歳)

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20歳になる平成3年4月時点では大学生だったが、平成5年3月までの24ヶ月間は未納にする。平成5年4月からは市役所で学生免除を利用して平成6年3月までの12ヶ月は保険料全額免除にした(将来の老齢基礎年金の3分の1に反映)。

平成6年4月からは民間企業に就職して厚生年金に加入する。その後、平成7年1月13日に風呂場で強烈な頭痛を訴えたため、母付き添いで救急車で運ばれ、若年性脳卒中のために緊急手術を受ける(初診日は救急車で運ばれた平成7年1月13日)。手術は成功したが、左腕全体にマヒが残ったためリハビリで回復を目指す事になる。

片方の腕全体に障害が残った状態であれば障害年金が請求できるのではないかとの情報を得たため障害年金を検討する。しかし、原則として初診日から1年6ヶ月経たないと請求できないとの事だったので、とりあえず当時の社会保険事務所では初診日以前の年金保険料納付状況を確認する事になる。

初診日までにあまり年金保険料の未納が多いと請求不可となる。初診日の前々月までに被保険者期間がある場合は、その3分の1を超える未納(33.3%超)があってはならない(保険料納付要件)。20歳(平成3年4月)から国民年金に加入して被保険者となり、初診日の前々月は平成6年11月までの44ヶ月間。44ヶ月間のうち24ヶ月が未納(未納率54.5%)。なので障害年金は請求できない。

でも、障害年金の保険料納付要件には昭和61年4月から特例があり、初診日の前々月までの直近1年に未納が無ければそれでもいい。平成5年12月から平成6年11月までの1年間に未納が無かったから請求できる。

ただ、実際に請求可能となるのは初診日から1年6ヵ月経過した日(障害認定日という)である平成8年7月13日。これ以降に障害年金が請求できる。

なお、初診日は厚生年金加入中だったから障害厚生年金の請求になる。障害厚生年金に使う厚生年金期間は平成6年4月から平成8年7月(障害認定月)までの28ヶ月間と、この間の平均給与(25万円とする))。請求の結果2級となる(麻痺は治らないと判断されて一生受給する事になった)。
年金支払いは障害認定月の平成8年7月の翌月分から。

令和3年時点で貰ってる年金額とします。令和3年時点では子17歳と15歳、12歳の子3人。65歳未満の夫あり(昭和32年1月生まれの64歳で継続雇用で在職中。62歳から20年以上の期間がある老齢厚生年金を受給)。

※ A美さんの障害年金総額。

・障害厚生年金2級→25万円×7.125÷1000×300ヶ月=534,375円

障害厚生年金2級の場合は65歳未満の配偶者が居ると配偶者加給年金が付くが、夫は20年以上の厚生年金期間がある老齢厚生年金を受給してるので配偶者加給年金は全額停止となる。

・障害基礎年金2級→780,900円+子の加算224,700円×2人+74,800円×1人=1,305,100円

・障害年金生活者支援給付金(障害基礎年金受給者に支給される)→60,360円(月額5,030円)

よって、A美さんの障害年金総額は障害厚生年金2級534,375円+障害基礎年金2級780,900円+子の加算224,700円×2人+74,800円×1人+障害年金生活者支援給付金60,360円=1,899,835円(月額158,319円)。

子の加算は子が18歳年度末を迎えるごとに消滅していく。

ところで、A美さんは平成10年までは厚生年金に加入していたが、退職してそれ以降は夫の扶養に入って国民年金第三号被保険者となった。ただし、A美さんが国民年金第三号被保険者になれるのは夫が65歳になるまで。夫が65歳になるとそれ以降はA美さんが自ら60歳になるまで国民年金保険料を支払っていく必要があるが、障害年金2級受給権者なので全額免除にする事はできる。

※ 追記

A美さんは65歳からは自分の老齢の年金を貰う事が出来るようになりますが、障害年金とは選択受給となります。ただし、障害基礎年金と老齢厚生年金は併給が可能。

image by: Shutterstock.com

年金アドバイザーhirokiこの著者の記事一覧

佐賀県出身。1979年生まれ。佐賀大学経済学部卒業。民間企業に勤務しながら、2009年社会保険労務士試験合格。
その翌年に民間企業を退職してから年金相談の現場にて年金相談員を経て統括者を務め、相談員の指導教育に携わってきました。
年金は国民全員に直結するテーマにもかかわらず、とても難解でわかりにくい制度のためその内容や仕組みを一般の方々が学ぶ機会や知る機会がなかなかありません。
私のメルマガの場合、よく事例や数字を多用します。
なぜなら年金の用語は非常に難しく、用語や条文を並べ立ててもイメージが掴みづらいからです。
このメルマガを読んでいれば年金制度の全体の流れが掴めると同時に、事例による年金計算や考え方、年金の歴史や背景なども盛り込みますので気軽に楽しみながら読んでいただけたらと思います。

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【著者】 年金アドバイザーhiroki 【発行周期】 不定期配信

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