頼りはロシアのみ。米ロ首脳会談前に中国が見せた「焦り」の意味

 

バイデンープーチン会談の【大戦略的意義】

とはいえ、バイデンがプーチンに会った理由は、これらの成果が欲しかったからではありません。

2018年から「米中覇権戦争」がつづいています。バイデン政権も、この戦争を継続していく意志を示している。それどころか、トランプさん以上のスピードで中国を追いつめています。どうやって?トランプは、「アメリカファースト」で、同時に「アメリカ単独主義」でした。彼の時代、アメリカは「一国だけで」中国バッシングしていた。そして、トランプは、NATO加盟国に「軍事費を大幅に増やせ!」と要求し、嫌われていました。

ところがバイデンは、「同盟戦略」に回帰し、着々と「中国包囲網」を拡大、強化しています。まず、日本、アメリカ、インド、オーストラリアの「クアッド」がある。彼は、ここにイギリス、フランス、ドイツを加えたい。そして、この欧州の三大国は、参加する方向になっています。今回の欧州訪問で、彼はG7、NATOとの関係を修復した。そして、「反中で結束させること」に成功したのです。

米中覇権戦争の帰趨は、何が決めるのでしょうか?実は、「その他の大国」の動きで決まります。「その他の大国」とは、具体的に、日本、欧州、インド、ロシアです。日本は、米中の間をフラフラしながらも、なんとかアメリカ側にとどまっています。欧州は、つい最近まで「チャイナマネー」欲しさで中国側にいました。しかし、2019年~2020年にかけて「香港問題」「ウイグル問題」があり、反中に動いています。インドは、昨年5~6月に中国と国境紛争が再燃。インド兵20人が亡くなったことで、完全に反中になりました。

残っているのはロシアだけです。もしバイデンがロシア取り込みに成功すれば、中国の敗北は決定です。あせった中国は、こんな声明をだしました。

テレ朝ニュース 6月16日

 

米ロ首脳会談が16日にスイスで開催されるのを前に、中国外務省は「中ロの団結は山のように動かない」と述べ、ロシアとの結束を誇示しました。

 

中国外務省は15日の会見で、プーチン大統領がアメリカメディアとのインタビューで中ロ関係の緊密ぶりを示したことを「高く称賛する」としました。

 

そのうえで、「中国とロシアの団結は山のように動かない」とし、「協力に天井はなく関係の発展に自信を持っている」と強調しました。

 

一方で、「中ロ関係を引き裂こうとする者に忠告する」と述べ、「いかなる企みも思い通りにはならない」としました。

「中ロの団結は山のように動かない!」(^▽^)

そうです。

ですが、歴史を見ると、「そうではない」ことがわかります。アメリカは第2次大戦時、ナチスドイツに勝つために、「殺人者」スターリンのソ連と組みました。第2次大戦が終わると、今度はソ連に勝つために、かつての敵ドイツ(西ドイツ)、日本と組みました。それでも状況が不利になると、今度はもう一人の「殺人者」毛沢東と組みました。そして、今は中国を打倒するために、「殺人者」プーチンと組むのです。

中国は今、ますます孤立の道を進んでいます。「友達」といえる国は、ロシアとイランぐらいしかいません。ロシア経済は、「クリミア併合」後7年間の経済制裁でボロボロになっています。人口1億4,600万人ロシアのGDPは、人口5,000万人韓国より少ないのです(世界GDPランキングで、韓国は10位、ロシアは11位)。

プーチンの願いは、「バイデンと仲良くして、できれば制裁を解除してもらうこと」です。だから、中ロの団結は「山のように動かない」のではない。中ロの団結は、「ヒトラーとスターリンの独ソ不可侵条約」のように脆いのです。

image by: The White House - Home | Facebook

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【著者】 北野幸伯 【発行周期】 不定期

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