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「赤木ファイル」で露呈した麻生大臣と財務省“遺族冒涜”の悪逆非道

森友学園問題を巡る財務省の決裁文書改ざんを強要され自死した、近畿財務局職員の赤木俊夫さん。22日、彼が改ざんの経緯を記録した「赤木ファイル」がようやく開示され、各メディアで大きく報じられています。その文書開示に至るまでの道のりを振り返るのは、健康社会学者の河合薫さん。河合さんはメルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』で今回、国が遺族に対して繰り返してきた許しがたい対応を挙げ強く非難。さらにメディアに対しては、財務省による幕引きを許さぬために、この「事件」に関して精力的な報道姿勢を取り続けることを訴えています。

プロフィール:河合薫(かわい・かおる)
健康社会学者(Ph.D.,保健学)、気象予報士。東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。ANA国際線CAを経たのち、気象予報士として「ニュースステーション」などに出演。2007年に博士号(Ph.D)取得後は、産業ストレスを専門に調査研究を進めている。主な著書に、同メルマガの連載を元にした『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアムシリーズ)など多数。

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赤木ファイル公開を決意させた“国の悪態”

財務省の決裁文書の改ざんに関与させられ自殺した、近畿財務局の赤木俊夫さんが職場に残した、いわゆる「赤木ファイル」が開示されました。

ファイルには518ページの文書がとじられていて、その冒頭で赤木さんは「現場の問題意識として決裁済の文書の修正は行うべきでないと財務省本省に強く抗議した。本省が全責任を負うとの説明があったが納得できず過程を記録する」と記していたそうです。

詳しい内容などは、テレビやメディア各紙が報じていますので、そちらをご覧いただくとして、ここに至るまでの長い道のりを振り返ります。

というのも…、昨年3月に赤木さんの妻、雅子さんが、国と佐川宣寿元財務省理財局長に対し、約1億1,200万円の損害賠償を求めた裁判を起こすまでの、国側の対応が実に醜く、一人でも多くの人に知っていただきたいからです。

怪物化した組織による明らかな歪んだパワハラで、一人の男性が命を絶った。「私の雇い主は日本国民。国民のために仕事ができる国家公務員に誇りを持っています」と常々語っていた1人の誠実な男性(赤木さん)と、家族を苦しめた許しがたい“事件”なのです。にもかからず、国側は「誠実」な対応をいっさいしませんでした。

「真相を知りたい」と願い雅子さんが、いちるの望みを懸けて公開したのが、赤木さんが亡くなる直前に必死の思いで綴った「手記」であり、今回の裁判です。

赤木さんの手記は、「週刊文春」2020年3月26日号に掲載されました。記事を書いたのは、NHKで森友事件を取材し、その後記者職を外され辞職したジャーナリストの相澤冬樹氏。

この記事には、パワハラで大切な人を失った家族の悲しみと、公表に踏み切るまでの心情の変化と苦しみも書かれていて、読んでいるだけで苦しくなりました。まるで“セカンドレイプ“のようなことを、平気でするエゴイストたちの言動が描かれていました。

相澤氏が手記を初めて目にしたのは、赤木さんが亡くなって半年余りたった18年11月27日。雅子さんから「会いたい」と言われ手記を渡されました。

その際、「絶対に記事にはしないでほしい」と念押しされ、雅子さんは手記を持ち帰りました。「夫の職場だから大切にしたい」という気持ちがあったそうです。

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しかし、それから1年4カ月後の20年3月7日に俊夫さんの三回忌を迎えるまでの間、雅子さんの気持ちを踏みにじるような態度を、財務省と近畿財務局は繰り返した。「麻生大臣が墓参りに来たいと言っているがどうするか?」という財務省職員からの連絡に、「来てほしい」と答えたにもかかわらず、一方的に「マスコミ対応が大変だから断る」と告げられました。

国会(当時)では麻生大臣が、「遺族が来てほしくないということだったので(墓参りに)伺っていない」と答弁し続けた。

その他にも多くの誠意のない言動が「当たり前」のように繰り返され、雅子さんの気持ちも変化。手記の公開に至ったとされています。

手記はA4判で7枚にも上り、冒頭には「苦しくてつらい症状の記録」と書かれていました。

手記にはことの顛末が極めて論理的かつ時系列にまとめられていただけでなく、「これまでのキャリア、大学すべて積み上げたものが消える怖さと、自身の愚かさ」「家内にそのまま気持ちをぶつけて、彼女の心身を壊している自分は最低の生き物、人間失格」といった自分を責める悲鳴もつづられていました。

「事実を知り、抵抗したとはいえ関わった者としての責任をどう取るか、ずっと考えてきたが、事実を、公的な場所でしっかりと説明することが今の健康状態と体力ではできない。この方法を取るしかなかった」との思いが最後に記されています。

改めて言うまでもなく、この問題は世間を騒がせた「森友学園への国有地売却問題」に起因し、前代未聞の文書改ざんという禁じ手に財務省が手を染めたのに、麻生大臣は「理財局の一部の職員が書き換えた」ものとし、売却の経緯も含め問題の真相は明らかになっていません。

赤木さんは森友学園との売買契約締結には一切関わっていないにもかかわらず、文書改ざんを余儀なくされ、「最後は下部が尻尾を切られる。なんて世の中だ。手が震える。怖い。命、大切な命 終止符」──というメモを残し、3年前の3月7日、命を絶ちました。

赤木さんは「ぼくの契約相手は国民」という信条をどうにか貫きたくて、「まさに生き地獄」の中で、力の限りを尽くして“事実”を書き残したのだと思います。

国会も閉じられ、麻生大臣は「財務省としては調査を尽くしている」と再調査は行わない考えを改めて強調しました。

しかし、このままでいいわけがない。これで終わらせていいわけないのです。

五輪五輪五輪の報道が繰り返される最中で、どうかメディアは精力的に報じてほしい。ただただ真面目に職務に向き合ってきた一人の職員が、恐怖に震え、大切な命が奪われた事件であることを忘れないでほしい。報じる人たちの良心が問われている「事件」だと私は思います。

みなさんのご意見、お聞かせください。

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image by: 財務省 - Home | Facebook

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