菅原一秀元経産相に反省の色なし。「公民権停止」記事が炙り出す日本の選挙事情

 

【サーチ&リサーチ】

* 今回は、この間の公選法違反事例を辿ることになる。

2020年9月2日付
2017年衆院選で当選した自民党・谷川弥一衆院議員(79)の陣営が選挙運動員に法定限度を超える報酬を支払ったとして、2人が公職選挙法違反(日当買収)罪で起訴された事件で、現金を手渡しした運動員に懲役刑と「公民権停止5年」が求刑されたが、執行猶予のついた懲役刑のみ。

* 谷川弥一議員はIR法審議の際に質問時間が余って般若心経の紹介を始めた人として有名。

* 今年4月に行われた福島県の田村町町長選挙で落選した本田仁一前市長は、「中元の返礼」と称して支援者である有権者にハムを配っていた。

2021年2月5日付
タイトル「案里被告の有罪確定、検察側も控訴せず 当選無効、再選挙へ 県議買収」の記事。河井案里氏の執行猶予付き懲役刑と公民権停止5年が確定。

2021年3月5日付
河井案里氏を巡る事件について、元特捜検事の郷原信郎弁護士が取材に応じて、金を受け取ったとされる大勢の県議らについて、以下のコメント。

「本来は起訴され、公民権停止になるべき人たちが堂々と選挙活動をしようとするのは理解できない」と。

2021年5月21日付
タイトル「知事選違反「処分当然」 元宇都宮市議長ら3人略式起訴 /栃木県」の記事。知事選告示前、公職選挙法に違反して福田富一知事への投票を呼びかける法定外文書を送ったなどとして、宇都宮市の元市議会議長や元市議ら3人が11日、略式起訴された。

* 上記については、元市議会議長に罰金30万円、公民権停止4年、知事の次男を含む元市議2人に罰金20万円、公民権停止3年の略式命令が下っていたが、今月に入り、2人とも「公民権停止期間の長さ」が不服ということで、宇都宮簡裁に公判での審理を求めて不服を申し立てた。

* そして菅原氏の1件…。

2021年6月2日付
タイトル「公民権停止、短縮狙う? 菅原議員辞職へ、なぜ今」の記事中、次の記述。

「前経済産業相の菅原一秀衆院議員(59)が1日、選挙区内での違法寄付問題の責任を取り、議員辞職を表明した。検察審査会の議決を受けた東京地検特捜部の再捜査期限が迫る中、処分前に自ら辞職して『情状』を訴え、公民権停止の期間を短くする狙いがあるとみられる」

●uttiiの眼

菅原氏のことはいったん置くとして、これら地方の選挙違反に関する記事群から見えてくるのは、地方政治の実情といったところか。

金品を配る買収、事前運動などは日常茶飯事となっており、たまに摘発されると決まって「略式起訴」され、執行猶予のついた懲役刑と「公民権停止」が科される。ところが、当人たちは次の選挙に立候補が可能となるよう「公民権停止」への不服を申し立て、その結果、停止期間が短縮され、目出度く次の選挙で返り咲く。露骨な選挙違反行為でも、やらないよりやった方が得になる。有権者も分かっていて問題にしない。

菅原氏の場合は、国会議員として遙かに責任が重いが、裁判所に訴えるのではなく、判決前に議員を辞職することによって“恭順の意”を表し、見事「公民権3年」を勝ち取っている。構造は地方政治の場合と似たようなものだ。

「地方政治の実情」は「中央政治の実情」でもあったということになるか。

【あとがき】

以上、いかがでしたでしょうか。

五輪強行の先には選挙が待っています。次の選挙を通して、なお改憲勢力が3分の2を上回る状況だった場合、3回目の安倍政権が姿を現すのではないかと危惧しています。

image by: すがわら一秀 - Home | Facebook

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ニュースステーションを皮切りにテレビの世界に入って34年。サンデープロジェクト(テレビ朝日)で数々の取材とリポートに携わり、スーパーニュース・アンカー(関西テレビ)や吉田照美ソコダイジナトコ(文化放送)でコメンテーター、J-WAVEのジャム・ザ・ワールドではナビゲーターを務めた。ネット上のメディア、『デモクラTV』の創立メンバーで、自身が司会を務める「デモくらジオ」(金曜夜8時から10時。「ヴィンテージ・ジャズをアナログ・プレーヤーで聴きながら、リラックスして一週間を振り返る名物プログラム」)は番組開始以来、放送300回を超えた。

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【著者】 内田誠 【月額】 月額330円(税込) 【発行周期】 週1回程度

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