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米から帰国で「犯罪者」扱い。メディアが報じぬ理不尽な日本の入国管理

東京五輪に出場するため入国したウガンダ選手団にコロナ陽性者が確認されたにも関わらず、空港では濃厚接触者の判定もないままバス移動し、案の定新たに陽性者が出て、多くの濃厚接触者を生むことになりました。選手団と同じ便の乗客の状況は明らかにされていません。一方で、ワクチン接種を終えているニューヨークからの帰国者が受けた理不尽な扱いについて、メルマガ『NEWSを疑え!』を主宰する軍事アナリストの小川和久さんが紹介。我が国の非科学的かつ矛盾だらけコロナ入国管理を嘆いています。

帰国者が驚く日本の「コロナ入国管理」の理不尽

オリンピック・パラリンピックをなんとか開催にこぎ着けようと、菅政権の焦りばかりが目立つこの頃ですが、外国から日本に入国、帰国する場合の課題について、マンハッタン在住の知人から教えてもらいましたので、以下、ご紹介申し上げます。

「2回のファイザー社のワクチン接種を済ませて6月初めに日本に帰国した友人から、日本という国は、接種を済ませて、感染率も落ち着いている米国から帰国した国民のことをまるで犯罪者のように扱う理性も科学的データも通じない国だから、今の時期は帰国しないほうがいいと言われました(笑)。相当に不快な思いをさせられたようです」

「入国時にスマートフォン(持っていないと入国不可で、あらかじめレンタルするように言われます)に複数のアプリをダウンロードさせられるのですが、その数が今月初めからさらに増え、MySOS(名前までふざけていると入国した友人は怒っていました)というテレビ電話機能での安否確認を毎日強要されたそうです」

「本当に自宅にいるかを確認するためにカメラを振って部屋の中を見せろなどと命ずるくせに、そこまで言うなら所属企業名と担当者名を名乗ってくれと言ったところ、規則で言えないの一点張りで通されたかと思いきや、翌日の担当者はあっさり名乗るなど、現場の運用もばらばらなようです。質問があって教えられてかけたセンターも民間委託で、何を聞いても結局返ってくる答えは「自分は委託されているだけなのでわからない」のみで、責任の所在も一切不明。厚労省が民間会社に業務を丸投げ委託しているそうで、個人情報がきちんと扱われているのかも心配だと言っていました。菅首相がG7から帰国したら同じ扱いを受けたものなのか、ぜひ知りたいものです」

「私の友人は相当に神経質なので着信を見逃すことなどなく、『監視』側が電話をかけてきた際にも逃さず受けて丁々発止やりとりするだけですんだようですが、あちらからランダムな時間に電話してくることできちんと自主隔離の室内にいるかどうかを確認するのが目的なため、電話をとりそびれると自動的に自主隔離を行っていない不届き者のラベルを貼られるようです。なにかあって電話を受け取りそびれて直後にコールバックしたくてもそれができない仕組みなので、お風呂に行くにもお手洗いに行くにも携帯を持っていかない限り、不届き者決定です」

「この友人はユナイテッド航空を利用してNJ州のニューアーク空港に到着、帰国2日前に日本からの帰国時も制限を受ける規制には入れられていないニュージャージー州で陰性証明を取得して帰国しましたが、その周辺のニューヨーク州、コネチカット州から帰国する場合には6月4日以降、指定施設で3日間隔離という通達がありました。そもそもNYを規制するのにNJは不問ということ自体、日本側で言えば千葉の成田空港に到着した人が帰国時に再び千葉に戻って陰性証明をとれば東京には行っていないという言い訳を認めるような変な規制です。NYをターゲットにするのであれば日常的に行き来が行われているその周辺州も一緒に制限しなければ意味がありません」

「ニューヨーク州ではワクチン接種率が70%に達し、ニューヨーク州の中でもどうしても感染率が高くなるニューヨーク市でも陽性率は0.6%以下、うち懸念されているデルタ株は5.6%ほどと少なく、ほぼ39%を占めるアルファ株などと違って特にこの変異種に対して注意喚起を促さないとならないような状況ではありません。領事館もなぜこのような措置をNY州からの帰国者が受けないとならないのか、決定の基準がまったく不明だと当惑していました。大都市のNYではインドなどから入ってくる人の流れも多いだろうというだけの理由だと思うのですが、各国から人が流入するとはいっても英国のような強い結びつきをインドと持っているわけでもなく、感覚ではなくきちんとしたデータを基に判断を行っていただきたいものです」

読んでいるうちに腹が立ち、だんだん情けなくなってきました。責任の所在も明らかでない丸投げの民間企業に、「不届き者」にされてしまう恐れがあるなど、メディアは報じていませんね。

それにしても、陽性者と濃厚接触者を出したウガンダ選手団と同じカタール航空で来日した残りの72人の乗客は、上記のような入国チェックを受けたのでしょうか。追跡は行われているのか。厚生労働省はメディアに「答えられない」としていますが、ますますもって日本の水際対策のひどさが感じられてなりません。

この理不尽さを感じないほどメディアが鈍感になっているのではないかと、心配になってきました。(小川和久)

image by: Shutterstock.com

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地方新聞記者、週刊誌記者などを経て、日本初の軍事アナリストとして独立。国家安全保障に関する官邸機能強化会議議員、、内閣官房危機管理研究会主査などを歴任。一流ビジネスマンとして世界を相手に勝とうとすれば、メルマガが扱っている分野は外せない。

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【著者】 小川和久 【月額】 初月無料!月額999円(税込) 【発行周期】 毎週 月・木曜日発行予定

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