「呪われた五輪」へ強行突入。菅政権の大バクチに殺される日本国民

 

「五輪成功」以外に政権延命の道がない菅

こんな不様な姿を晒しながら、それでもなお五輪を中止することなく無理やりにでも強行することになったのは、IOC、米テレビ局やスポンサー企業、JOCはじめ日本の諸団体など、それぞれに切羽詰まった都合や利害を抱えている様々な関係者の合力の結果であるけれども、その中でも最大の推進要因は、「五輪を成功させた」と言い張る以外に政権を延命させることができない、追い詰められた管首相の自己都合である。

内閣支持率はすでに危機ラインに達し、7/18TV朝日調査で29.6%(-2.8)、不支持46.1%(+3.4)。7/18共同調査で同35.9%(-8.1)、不支持49.2%(+7.0)。いつ倒れてもおかしくない政局の地合いである。

その最中に五輪強行とはリスクが大き過ぎないかと誰もが思うけれども、菅の発想は違っていて、「五輪が大惨事になればどのみち辞任だろう。だったら一か八かで開催を強行し、その一の可能性に賭けるしかない」ということなのだろう。彼は20日、米紙WSJのインタビューに答えて「周囲からはずいぶん中止したほうがいいと助言されたが、止めるのは簡単。挑戦し続けるのが政治の役目」と語っていて、これはもう、決意とか覚悟とかではなくて、誰の制止も振り切って、目を瞑ってでも突き進むしかないという猪突猛進の心境である。

すでに陽性になって来日を断念したり、事前合宿を中止したり、来日後に選手村などで感染したらしい選手・コーチ・関係者が出たり、それを見て選手村入りを怖がってホテル滞在に切り替える選手団がいたりして、すでにして「安心・安全」の確保に失敗し、結果として公正・対等な条件での試合の実現が一部崩れつつある。例えば金メダルの有力候補でそのために何年間も精進してきた選手が出場できなくなったとして、「あ、彼(彼女)は残念でしたね」ということにして置き去りにして試合をし、別の誰かが金メダルを奪ったとして、その誰かは嬉しいんですかね。私は開会されたばかりの今の段階で、すでに五輪の意義も金メダルの価値も崩壊していると思うが、テレビはそんなことは無視して、目先のあれこれの競技で「ウォーッ、世界新記録で日本に金メダルで~す!」などと絶叫し続けるんでしょうかね。

この五輪の8月8日までの期間中に一大感染事故が起きて途中中止という最悪事態となれば、菅は即刻辞任だろう。7月22日の東京都の新感染者数が1,832人で、専門家が「8月上旬に第3波を超えて2,600人に達する」(7/23朝日=写真)、「上旬に1日3,000人超」(7/22京都大学西浦教授)と予測している中ではそうなってもおかしくない。

この五輪期間中は何とか乗り切っても、8月上旬に感染ピークが来てしまうと24日からのパラが開けるかどうかの難しい判断となり、そこで中断というケースもあり、この場合も菅は即刻辞任だろう。

そこも乗り越えて、ズタズタボロボロながらもパラ閉会式まで辿り着いたとして〔それが上述「一か八か」の「一」に当たる〕、菅は当然「我々はコロナに打ち勝った」と強弁し、それに対し世論はもちろん自民党内からも「何を言ってるんだ」と反発が高まるような状況で、さて果たして彼は9月総裁選で再任、10月総選挙でそこそこの勝利を得られるのか。

それは相当難しいので、おそらく菅は総裁選を総選挙後まで延期し、「我々はコロナに打ち勝った」という強弁が成り立つ間に、先に総選挙を打ってそこそこの結果〔というのは現有276の自民党が仮に40程度減らしても単独過半数233を割ることはないという最低ラインに目標を設定して「負けていない」と言い張るという意味〕を得れば、「コロナに勝った」「五輪は成功した」「自民は過半数を割らなかった」と言って、総裁に無投票再選されることを目指すのだろう。

いろいろな分かれ道がありうるのだが、実際には五輪後の8月10日前後に各社が一斉に世論調査をやり、そこで「管内閣の支持率×五輪評価×コロナ感染状況」の3次元方程式の解が出れば、行き着く先が大筋見えてくるのだろう。

高野孟さんのメルマガご登録、詳細はコチラ

 

print
いま読まれてます

  • 「呪われた五輪」へ強行突入。菅政権の大バクチに殺される日本国民
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け