中国が目論む「台湾撹乱戦争」6年以内に勃発も?戦狼外交の生みの親を駐米大使に任じた習近平の狙いとは

 

王毅外相は何をアメリカサイドに突き付けたのでしょうか。1つ目は、中国の転覆を企てるなとの批判です。これは、クワッドや自由で開かれたインド太平洋地域(FOIP)に代表される対中包囲網形成に対しての中国からの猛烈な批判を指します。「中国はそのような圧力に屈しない」とのメッセージが表れています。

2つ目は、一方的なすべての対中制裁を解除せよとの要求です。これは、トランプ政権時代から課されている関税措置やハイテク企業のアメリカ市場での上場停止や、米国内での操業禁止という措置を指しています。このメッセージに込められた中国政府の思いは、「米国内でのいざこざのフラストレーションを中国に押し付けるな」とのメッセージではないかと思われます。

中国や韓国にとって、内政状態が芳しくない場合に、一番手っ取り早い解決策は、日本バッシングであるというポイントと似ているのかもしれません。「中国バッシングで、米国内に蔓延る諸悪を覆い隠すのはやめろ」とのメッセージです。

そして3つ目で、かつ最も強調されたのが「領土や主権に決して介入するな」とのメッセージです。香港や新疆ウイグル自治区をめぐる人権問題に対する欧米の批判はもちろんのことながら、王毅外相が最もハイライトしたのが台湾に対するアメリカ(と日本)の肩入れです。

「台湾独立勢力が挑発するなら、中国は必要なあらゆる手段を取り、それを阻止する」というメッセージは、「え、もしかして米中が台湾海峡を舞台に本当に戦火を交えるの?」という懸念を生じさせます。

それに現実味を帯びさせるのが、米軍の前インド太平洋軍司令官であるDavidson総司令官が3月9日に議会で語った「2027年までに中国は台湾に侵攻する可能性が高い」という内容です。

この発言と見解については、様々な意見があります。以前お話ししたように「軍事費再拡大のための誇張ではないか」との見方もあれば、「いやいや、これは昨今の中国の急速な軍拡と性能アップによって、インド太平洋地域における米中の軍事的なバランスが逆転したため、あながち誇張とは言えず、現実的な脅威に違いない」とする意見です。

中長期的にみれば、おそらく後者だと私は思いますが、ここでのミソは「2027年までに」という時限の存在です。

2027年までにとするならば、アメリカのCSISを含む各国の研究機関の見立てを見てみたところ、中国による台湾の武力による統一は非常に困難ではないかと考えます。

台湾は物理的には小さいですが、台湾を武力で統一する場合、少なくとも数週間、おそらく数か月というタイムスパンで、台湾海峡を完全に支配し、台湾を紅く染めるための作戦実行能力(兵站を含む)はないと思われます。

次に、仮に初戦でアメリカと台湾のサイドが負けたとしても、世界中に展開する米軍と核・宇宙・サイバー部隊などを含む戦力が結集して、沽券にかけて反撃に臨むものと思われます。そこに英国・フランス・ドイツという欧州勢と、クアッドが介入することが予想できますので、台湾の占領はかなり難しいでしょう。

恐らくその状況を習近平国家主席も中国の人民解放軍も理解しており、習近平国家主席の当面の狙いは【台湾の独立阻止】であり、中期的には、平和的な統一の道も選択肢としてまだ残していると思われます。

ただし、これらの理由とシナリオの大前提は【アメリカとその同盟国が、中国による台湾への攻撃に対して、介入すること】であり、もし積極的な介入がない場合は、案外容易に習近平国家主席はその宿願を叶えることになるかもしれません。

ただ、これまでのアメリカ政府の台湾問題への介入度合いから判断すると、中国が台湾に武力行使した場合に座視していることは、アメリカの沽券にかかわるため、まずありえないとは考えますが。

国際情勢の裏側、即使えるプロの交渉術、Q&Aなど記事で紹介した以外の内容もたっぷりの島田久仁彦さんメルマガの無料お試し読みはコチラ

 

print
いま読まれてます

  • 中国が目論む「台湾撹乱戦争」6年以内に勃発も?戦狼外交の生みの親を駐米大使に任じた習近平の狙いとは
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け