中国が目論む「台湾撹乱戦争」6年以内に勃発も?戦狼外交の生みの親を駐米大使に任じた習近平の狙いとは

 

では、中国にとってより現実的な2027年までの戦略はどのようなものが考えられるでしょうか。

1つ目は、以前にも脅威として指摘しましたが、台湾の離島への武力行使を行い、占拠することで台湾とその同盟国にプレッシャーをかけるという戦略です。

台湾領の離島とは、台湾の南西に位置する東沙諸島、南シナ海に位置する大平島と馬祖列島を指しますが、東沙諸島を除き、台湾から物理的に離れているため、南シナ海にも戦略的な軍事展開をしている中国の人民解放軍にとっては、作戦的には実行可能だと考えられます。

しかし、実行した暁には、確実にアメリカをはじめ、同盟国に介入の口実を与え、台湾への防衛支援が急増するだけでなく、国際的な対中批判の激化は避けられないでしょう。

そして、一気に米中間の緊張は高まり、一触即発状態に陥ります。その場合、偶発的な衝突は米中間での武力衝突につながり、これまでに蓄えてきた中国の軍事的な能力をそぐことになり、短中期的な再統一はかなり困難になるでしょう。

可能性はゼロではないと考えますが、この戦略を選択することは考えづらいと思います。

では他にはどのような戦略があるでしょうか。考えうる現実的な戦略は【中国による官民挙げての台湾かく乱戦争】です。これは、中国が能力を著しく向上させてきたサイバー攻撃や、メディアや外交の舞台、そしてフェイクニュースの流布などによる情報操作という、中国にとっては大の得意技です。

それを対台湾で仕掛け、市民の不満や不安を煽り、それに対応できない台湾政府当局への反抗を誘導すると同時に、台湾政府内の親中派を投資などのチャイナマネーで取り込んで、政府内の独立派と台湾の現在の統治体制を弱体化させようとの企てが考えられます。

これはロシアがとても得意とし、クリミア半島併合の際に用いたハイブリッド戦争の典型例と言え、中国独特の情報戦略と諜報戦略と相まって、中国がもつ情報操作能力を格段に上げています。

あまり報じられませんが、一帯一路政策の影にもしっかりと組み込まれている戦略です。

このような攪乱戦争を実施している間に、まだ実行能力が出来上がっていないと指摘した軍事能力も向上・ブラッシュアップし続けて、全面的な台湾進攻を準備するものと考えられます。

そうすると、1つ目の戦略同様、時期こそずれるかと思われますが、偶発的な米中間の出来事(衝突)が、中国にとっては意図しない戦争へと一気にエスカレートするかもしれません。もしその時、まだ中国側が台湾への軍事侵攻と統一を可能にするレベルまでキャパシティーが伴っていない場合、この偶発的な戦争で仮に中国が敗れたら、それはすぐに、習近平体制と中国共産党支配の終わりを意味することになるでしょう。

そのリスクを、どこまで習近平体制が取る覚悟があるかによって、台湾をめぐる緊張の行方が変わってくるでしょう。もちろん、ほかの因数は、アメリカの台湾防衛に対する本気度ですが。

ただ、この問題を考える際、大きな懸念材料は、【米中間の軍事的なパイプ・チャンネルが、トランプ政権以降、失われていること】です。

オースティン国防長官との協議もできておらず、かつこれまで存在した米軍と中国の人民解放軍の幹部間の定期的な協議も、もう長く行われていません。

それはつまり、偶発的な衝突が起きてしまい、戦争やむなしとなった際に、水面下で交渉して、何とか戦争を回避するという機会がないことを意味します。

インド太平洋地域における物理的な軍備は、Davidson前司令官が証言したように、海軍力ではすでにアメリカを凌駕し、空軍ほかの戦力も近々アメリカの規模を超えると思われますが、問題は、それらの肥大化し、最先端と思われる軍備のキャパシティーを存分に引き出し、自軍の被害を最小限に抑えるという、運用能力や作戦実行能力という総合的な力がまだ、アメリカに比べると整っていないことでしょうか。

ゆえに、もしアメリカが総力を結集して、対中戦争を戦うことにしたとしたら、しばらくの間、勝ち目はないと思われます。

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