消えた“小池総理”と「与野党大連立」の急浮上。政局の山場は8月22日か

 

もう1つ大きな要素としては、解散にしても任期満了にしても、数ヶ月内に衆議院選挙があるということです。こうなると全ての衆議院議員は石に齧りついても議席を守りたいわけで、彼らにとってはこれが最優先事項になります。特に自民党の議員の場合は、磐石の組織を持っているのでなければ、自民党の人気が自分の当落に直結する中で、危機感は大きいに違いありません。

この解散のタイミングですが、菅総理が自力で解散できれば多少の求心力になるという説がありますが、日々その可能性は消えつつあります。反対に、ここへ来て、コロナ禍で緊急事態宣言を拡大するかどうかという中では、9月の解散は不可能という説もあります。

いずれにしても、こうしたファクターを総合すると、次の2つのシナリオが指摘できると思います。1つは、自民党を中心とした大連立、つまり自公政権を中心に足りない分を野党から補う作戦で、いわば1994年の村山内閣の再現ということになります。つまり自公だけでは過半数が取れないという場合に、野党の一部を取り込む、その場合に野党の顔を立てて首班は野党から出すという方法です。

もう1つは、野党が主体となって自民党を分断させて新政権を樹立する作戦、つまり1993年の細川内閣の再現ということになります。つまり自民から大量の離党者を出して政界再編をするという方法です。ちなみに、2009年に鳩山政権を誕生させたような、自民党を一気に下野させるような受け皿を野党が用意する可能性は少ないと思います。

まず、政局の山場は9月の自民党総裁選の「前」にやって来そうです。具体的には、8月22日投開票となる横浜市長選挙が気になります。ここでは、菅総理が若い時期から仕えていた小此木彦三郎(中曽根派から渡辺派の大物)という政治家の長男、八郎氏が立候補しています。

この小此木八郎氏の立候補ですが、何から何までが異例です。争点はIR(統合リゾート)つまりカジノを横浜の山下埠頭に誘致する案の是非となっているのですが、この案件は、総理と小此木氏が長年誘致の旗を振っていたわけです。ところが、このIRについて、小此木氏は「反対」を掲げるために閣僚の座を投げ打って立候補しています。つまり衆議院議員も、国家公安委員長のポストも捨てて、自分たちが推進していた「IR計画」を自分たちで潰すために立候補しているわけです。

しかも、市長選のレベルの選挙に対して、総理大臣が特定候補の支持をするというのも異例です。この問題では、菅総理の子息が大手ゼネコンに就職してカジノ推進に関与していることがスキャンダル化するのを防止するには「反対を掲げて市長選に勝利する」ことが必要という解説があります。

これはややニュースマニア向けの説明ですが、問題は、八郎氏が落選した場合、これを契機に菅総理の求心力が消滅する可能性で、こちらは全く洒落になりません。そうなると、衆議院の自民党議員団が、自分が10月に落選する恐怖から一斉に「菅以外の旗印」を求めて走り出すわけで、その勢いが政権を吹っ飛ばすエネルギーになる可能性が否定できません。

そうした場合に、想定できるのは小池百合子氏が自民党に復帰して二階派から総裁に名乗りを上げるストーリーでした。散々取り沙汰されてきた案ですが、都の感染爆発、そして五輪の後始末という問題を考えるとタイミングは「今ではない」と考えられます。

とにかく、小池氏というのは「希望の党」で1回失敗していますから、こうした世論の「空気」には敏感なはずです。反面、コロナ禍の中でここまで菅総理と奇妙な意地の張り合いをして、しかもそれに一時期は勝利しており、存在感は抜群ですから、国政復帰のタイミングとしては先送りできないとも思っているでしょう。

その場合は、小池氏は自民党に復帰するにしても、二階派の一議員として黒子にまわり、誰かを担ぐということになります。もっと大胆な予想をするのであれば、二階派を丸ごと承継して小池派に衣替えして、仮に90年代からの小池氏の「腐れ縁」、つまり日本新党系とか、小沢系とかをフル稼働してキングメーカーになるという可能性はあります。

例えばですが、総裁を茂木外相にして二階派(小池派)がこれを支えて、選挙に臨み、やや敗北した場合には国民民主と維新を取り込んで連立。その場合の首班は、玉木雄一郎氏などが想定されると思います。その上で、国民から待望論が出たら自分が登場するという流れです。

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