消えた“小池総理”と「与野党大連立」の急浮上。政局の山場は8月22日か

 

もう1つのシナリオは、自民党の党内力学として、9月に岸田文雄、下村博文、高市早苗などのクラシックな自民党政治家を総裁にしてしまうとか、または、同じように自民党の党内力学から、菅=二階体制が壊れずに、解散もしくは任期満了となる可能性です。その結果として、自民党が総選挙で大敗北を喫したとすると、どうなるでしょうか?

その場合、仮に小池氏が自民党復帰を敬遠していた場合は、選挙後に「元希望の党」グループを中心に野党主導での大連立という可能性も出てきます。つまり、細川方式で、そうなると小沢一郎という「昔の名前」が暗躍するかもしれません。その場合は、共産との関係を深めている立憲については前回同様に「排除」が続くと思われるので、過半数まで持っていくのには駒は足りないでしょう。

そこで、1993年と全く同じように、自民党の中に「手を突っ込んで」二階派やアンチ清和会のグループをゴッソリ引っこ抜くことになると思います。その場合は、茂木氏または河野氏などを総理に据えて、その政権がコケた時点で「国民から改めて推戴を受けて」小池首相の登場ということを考えているのかもしれません。

小池氏の政策ですが、とにかく政治的な判断が100%で、手なりの打ち方で状況に反応していくということになりそうです。但し、小泉純一郎氏の影響が強いので、脱原発ということは言いそうですし、既に「都民ファ」でも宣言しています。この点に関しては、15年とか20年とかの期限を切って、産業構造を知的な省エネ型に転換するまでの猶予は設けてほしいところです。一方で、本当の意味での改革に関しては、あんまり期待はできそうもありません。軍事外交は中道やや右ですが、安倍晋三のように憲法改正に強いこだわりはないようです。

小池氏を中心にお話をしてきましたが、コロナ禍に加えて豪雨禍が重なる中で、地方重視ということから石破茂氏の存在を「大穴」として見ておきたいと思います。

石破氏については、改革への問題意識が希薄であり、地方政策に関してもバラマキの域を出ず旧態依然としており心配な点が多いのですが、全く官僚の言いなりになるわけでもなさそうだし、状況に対して対応するにしても、考え方のベースはありそうです。極めて頼りなさそうですが、ベースが絶無ということではないと思います。その上で、とりあえず自分で必死に語ろうという姿勢はあります。

勿論、コロナ禍とその影響としての急速な地方衰退について、どんな対処シナリオを持っているのか、怪しい感じもするのですが、とにかく、ダークホースであるとは思います。

河野太郎氏については、破壊を伴う改革(教育、安保、産業)をするのなら、この人ぐらいしかいないので、コロナ禍で消耗する可能性のある現時点のタイミングではないように思います。ただ、小池氏の政治的勢いが強くなった場合に、あまり静観しているとお父様の二の舞になるので、勝負どころは外せないとも思いますが。

いずれにしても、22日の横浜市長選に注目したいと思います。最悪のケースとしては、誰も25%が取れずに再選挙となり、そこで合従連衡工作がされる中で、IRと菅総理の関係がスキャンダルとして炸裂、政権が崩壊して9月にはクラシックな自民党総裁選となる…というシナリオが考えられますが、そうならないことを祈るばかりです。コロナ禍の中でそんなことをしている暇はないと思うからです。

(メルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』より一部抜粋)

【緊急告知・LIVE配信のお知らせ】

政治経済からエンタメ、スポーツ、コミュニケーション論まで多角的な情報を届けしている冷泉彰彦さんが、メルマガ読者を対象にライブ配信を行います。この機会にぜひ初月無料のメルマガお試し購読をどうぞ。
テーマ:未定
日時:2021/8/20(金)20:30~ ※90分程度を予定
この配信はメルマガ読者限定配信です。事前にメルマガの読者登録をお済ませください(初月無料のお試し購読期間でも視聴できます)。
視聴忘れのないように、まぐまぐ!Liveアプリでフォローをお願いします。配信開始時に通知が届きます。
視聴方法はこちらから。
※配信内容・時間は変更になる場合があります

政治経済からエンタメ、スポーツ、コミュニケーション論まで多角的な情報が届く冷泉彰彦さんのメルマガ詳細・ご登録はコチラ

 

初月無料購読ですぐ読める! 8月配信済みバックナンバー

※2021年8月中に初月無料の定期購読手続きを完了すると、8月分のメルマガがすべてすぐに届きます。
2021年8月配信分
  • 【Vol.391】冷泉彰彦のプリンストン通信 カブール陥落と、反テロ戦争の終わり(8/17)
  • 【Vol.390】冷泉彰彦のプリンストン通信 日本の政局の重苦しさを考える(8/10)
  • 【Vol.389】冷泉彰彦のプリンストン通信 コロナとアメリカの分断の現在(8/3)

いますぐ初月無料購読!

<こちらも必読! 月単位で購入できるバックナンバー>

※初月無料の定期購読のほか、1ヶ月単位でバックナンバーをご購入いただけます(1ヶ月分:税込880円)。

2021年7月配信分
  • 【Vol.388】冷泉彰彦のプリンストン通信 アメリカから見た東京五輪の開会式中継(4つの観点から)(7/27)
  • 【Vol.387】冷泉彰彦のプリンストン通信 東京五輪を直前に控えて、安全と安心の違いを考える(7/20)
  • 【Vol.386】冷泉彰彦のプリンストン通信 日本人差別事件に関する3つの視点
    (7/13)
  • 【Vol.385】冷泉彰彦のプリンストン通信 バイデン政権の弱点は、反ワクチン派と副大統領周辺か?(7/6)

2021年7月のバックナンバーを購入する

2021年6月配信分
  • 【Vol.384】冷泉彰彦のプリンストン通信 バイデン政策と現代資本主義論(政府の役割とその限界)(6/29)
  • 【Vol.383】冷泉彰彦のプリンストン通信 資本主義は修正可能か?(その2、改めて議論を整理する)(6/22)
  • 【Vol.382】冷泉彰彦のプリンストン通信 資本主義は修正可能か?(その1、現代の価格形成トレンド)(6/15)
  • 【Vol.381】冷泉彰彦のプリンストン通信 コロナ・五輪の迷走が示す「お上と庶民」相互不信の歴史(6/8)
  • 【Vol.380】冷泉彰彦のプリンストン通信 ロッキードと現在、政治の不成立(6/1)

2021年6月のバックナンバーを購入する

2021年5月配信分
  • 【Vol.379】冷泉彰彦のプリンストン通信 台湾海峡をめぐる4つの『ねじれ』(5/25)
  • 【Vol.378】冷泉彰彦のプリンストン通信 五輪追加費用、問題はIOCより国内の利害調整では?(5/18)
  • 【Vol.377a】冷泉彰彦のプリンストン通信 五輪の食事会場に『監視員配置して会話禁止』、どう考えても不可(5/14)
  • 【Vol.377】冷泉彰彦のプリンストン通信 東京五輪をめぐるカネの話を怪談にするな(5/11)
  • 【Vol.376】冷泉彰彦のプリンストン通信 衰退途上国論(5/4)

2021年5月のバックナンバーを購入する

2021年4月配信分
  • 【Vol.375】冷泉彰彦のプリンストン通信(4/27) (緊急提言)コロナ政策、全面転換を主権者に問え!
  • 【Vol.374】冷泉彰彦のプリンストン通信(4/20) 菅=バイデンの「対面首脳会談」をどう評価するか?
  • 【Vol.373】冷泉彰彦のプリンストン通信(4/13) 政治はどうして『説明』ができなくなったのか?
  • 【Vol.372】冷泉彰彦のプリンストン通信(4/6) 主権者が権力を委任しなくなった未来国家ニッポン

2021年4月のバックナンバーを購入する

2021年3月配信分
  • 【Vol.371】冷泉彰彦のプリンストン通信(3/30) オワコンばかり、3月4月のイベントは全面見直しが必要
  • 【Vol.370】冷泉彰彦のプリンストン通信(3/23) 中国の経済社会は、ソフトランディング可能なのか?
  • 【Vol.369】冷泉彰彦のプリンストン通信(3/16) 五輪開催の可否、3つのファクターを考える
  • 【Vol.368】冷泉彰彦のプリンストン通信(3/9) 311から10周年、被災地だけでない傷の深さ
  • 【Vol.367】冷泉彰彦のプリンストン通信(3/2) 日本でどうしてトランプ支持者が増えたのか?

2021年3月のバックナンバーを購入する

image by: 首相官邸

冷泉彰彦この著者の記事一覧

東京都生まれ。東京大学文学部卒業、コロンビア大学大学院卒。1993年より米国在住。メールマガジンJMM(村上龍編集長)に「FROM911、USAレポート」を寄稿。米国と日本を行き来する冷泉さんだからこその鋭い記事が人気のメルマガは第1~第4火曜日配信。

有料メルマガ好評配信中

  初月無料で読んでみる  

この記事が気に入ったら登録!しよう 『 冷泉彰彦のプリンストン通信 』

【著者】 冷泉彰彦 【月額】 初月無料!月額880円(税込) 【発行周期】 第1~第4火曜日発行予定

print
いま読まれてます

  • 消えた“小池総理”と「与野党大連立」の急浮上。政局の山場は8月22日か
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け