もう1つのシナリオは、自民党の党内力学として、9月に岸田文雄、下村博文、高市早苗などのクラシックな自民党政治家を総裁にしてしまうとか、または、同じように自民党の党内力学から、菅=二階体制が壊れずに、解散もしくは任期満了となる可能性です。その結果として、自民党が総選挙で大敗北を喫したとすると、どうなるでしょうか?
その場合、仮に小池氏が自民党復帰を敬遠していた場合は、選挙後に「元希望の党」グループを中心に野党主導での大連立という可能性も出てきます。つまり、細川方式で、そうなると小沢一郎という「昔の名前」が暗躍するかもしれません。その場合は、共産との関係を深めている立憲については前回同様に「排除」が続くと思われるので、過半数まで持っていくのには駒は足りないでしょう。
そこで、1993年と全く同じように、自民党の中に「手を突っ込んで」二階派やアンチ清和会のグループをゴッソリ引っこ抜くことになると思います。その場合は、茂木氏または河野氏などを総理に据えて、その政権がコケた時点で「国民から改めて推戴を受けて」小池首相の登場ということを考えているのかもしれません。
小池氏の政策ですが、とにかく政治的な判断が100%で、手なりの打ち方で状況に反応していくということになりそうです。但し、小泉純一郎氏の影響が強いので、脱原発ということは言いそうですし、既に「都民ファ」でも宣言しています。この点に関しては、15年とか20年とかの期限を切って、産業構造を知的な省エネ型に転換するまでの猶予は設けてほしいところです。一方で、本当の意味での改革に関しては、あんまり期待はできそうもありません。軍事外交は中道やや右ですが、安倍晋三のように憲法改正に強いこだわりはないようです。
小池氏を中心にお話をしてきましたが、コロナ禍に加えて豪雨禍が重なる中で、地方重視ということから石破茂氏の存在を「大穴」として見ておきたいと思います。
石破氏については、改革への問題意識が希薄であり、地方政策に関してもバラマキの域を出ず旧態依然としており心配な点が多いのですが、全く官僚の言いなりになるわけでもなさそうだし、状況に対して対応するにしても、考え方のベースはありそうです。極めて頼りなさそうですが、ベースが絶無ということではないと思います。その上で、とりあえず自分で必死に語ろうという姿勢はあります。
勿論、コロナ禍とその影響としての急速な地方衰退について、どんな対処シナリオを持っているのか、怪しい感じもするのですが、とにかく、ダークホースであるとは思います。
河野太郎氏については、破壊を伴う改革(教育、安保、産業)をするのなら、この人ぐらいしかいないので、コロナ禍で消耗する可能性のある現時点のタイミングではないように思います。ただ、小池氏の政治的勢いが強くなった場合に、あまり静観しているとお父様の二の舞になるので、勝負どころは外せないとも思いますが。
いずれにしても、22日の横浜市長選に注目したいと思います。最悪のケースとしては、誰も25%が取れずに再選挙となり、そこで合従連衡工作がされる中で、IRと菅総理の関係がスキャンダルとして炸裂、政権が崩壊して9月にはクラシックな自民党総裁選となる…というシナリオが考えられますが、そうならないことを祈るばかりです。コロナ禍の中でそんなことをしている暇はないと思うからです。
(メルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』より一部抜粋)
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