「菅では無理」見切りをつけた二階幹事長が石破を担ぐ自民のカオス

 

菅再選があるとすれば派閥談合しかない

確かに、総裁選に出ても勝てないのであれば、出ても仕方がないということになる。昨年の場合は、二階俊博幹事長の寝技によって二階派(47)、清和会(96)、麻生派(53)、平成研(52)が菅支持で談合し、それに石原派(10)も追随して5派体制が出来上がり、岸田派(46)、石破派(17)を難なく抑えて総裁選を制することができた。

しかし今年の総裁選が昨年と決定的に違うのは、10月に任期満了を迎える衆議院選挙が迫り、来年7月には参議院選挙も控える中、直接に「誰と一緒のポスターを作れば自分が当選できるか」の選択となることである。しかも、長く続いた安倍政権の下で楽々と勝ち上がってきた3回生以下の“安倍チルドレン”が衆参とも約半分を占めていて、この人たちが直面する初めての逆風ということになるので、彼らも必死である。

さらに昨年は、安倍の任期途中での辞任を受けてのものであったことから、衆議院283+参議院111の国会議員票計394票と、都道府県各3票ずつの地方票141票の総計535票を争った。それに対して今年は、いわゆるフルスケールで、衆議院276+参議院107=383の国会議員票に対して地方にも同じく383票が与えられ、その配分は114万人の党員・党友の投票をドント方式で配分する。その分、一般選挙民に近い感覚が反映されやすい。

従って、派閥のボスがいくら上から締め付けても、国会議員も地方組織も素直に従わないため、昨年のような5派閥談合体制のようなものは実現しない。ということは、菅の目はほとんどないということで、菅にとっては、それでも「めげずに頑張る菅」として討死覚悟で突き進むか、「もはやこれまで」と潔く事前に下りるかの選択となる。

「横浜ショック」が余りにも大きくて

こんなことになったのは、やはり「横浜ショック」のせいである。

誰よりも、菅政権の生みの親である二階が、「菅総理を代える意義は見つからない」との公言は撤回していないものの、内心では「菅ではもう無理」と見切りをつけ、菅と心中しないで済む方策を考え始めたと言われる。狸爺としては当然のことだろう。

安倍晋三前首相は、横浜ショック前は、ここは1つ早々に「菅続投」への流れを作って菅に恩を売り、総選挙でのほどほど敗北の責任は二階に押し付けて幹事長に盟友の甘利明=党税調会長を据え、自分は清和会の会長となって「キングメーカー」の地位を固めようという構想だったが、菅では衆院選は政権の維持もおぼつかないほどの大惨敗になりかねないということで、元々昨年は後継指名するはずだった岸田文雄支持に回帰すべきかどうか迷っているところだろう。安倍がそうなら麻生も腰が座らない。そういう訳で、昨年談合で菅政権を生んだ5派のうち、派閥としてはっきりと菅支持を打ち出しているのは、今のところ最小派閥の石原派だけなのである。

二階派は、二階自身は上述のように公言しているが、派閥の会合では多くの若手から「勝手に決めるな」と異議が上がった。清和会は細田博之会長が個人見解として菅支持を口にしたが、安倍はずる賢いことに明言を避けており、派閥としての議論もまだ行われていない。麻生派も幹部会で議論したものの結論を先延ばしした。平成研は、体調不良の竹下亘会長の代行を務めている茂木敏充外相が「基本は菅支持で」と言ってはいるが、この言い方は「他の選択もある」と言っているようなもので、いずれにせよここも合議はない。

この状況では、安倍と麻生が「岸田で行こう」と踏み出し、「菅でなければ誰でもいい」と思っている者たちが追随するということはあり得ても、菅への流れが派閥次元から生じることはあり得ないのではないか。

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