岸田首相の「中間層」という言葉は、確かに耳触りはいい。所得倍増という言葉も刺激的です。しかし、現実に目を向けると、いかに「中間層」というのがとらえどころのない、極めて曖昧な言葉であることがわかるはずです。
富裕層を増やし続けたアベノミクスを否定し、「新しい資本主義」を創り上げるという意気込みには賛同するし、期待もします。
でも、やはり何をもって「中間層」と言っているのか?具体的に賃金をいくらまであげていくのか?日本という国は「なにで」食べていくのか?それをもっともっと具体的な言葉で、きちんと教えて欲しい。ターゲットが、ゴールが全く見えない政策に、「共感」するのはかなり難しいのです。
そもそも「一億総中流」と呼ばれた1960年代~70年代は、戦後の貧しい生活から抜け出せない人たちがかなりいて、明らかな経済格差が存在しました。にもかかわらず、実に9割の人が「自分は中流である」と認識できた。
なぜか?それは「希望を持てる社会」だったからです。
「所得倍増計画」により年々給料が増え、家にはテレビ、洗濯機、冷蔵庫、クーラーなど新しい家電製品が並び、「過去の自分より今の自分の方がいい生活をしている、もっともっといい生活ができる」という実感と、将来への希望が中流意識を拡大させたのです。
今は豊かさも多様化し、社会は複雑化しています。それでも報われない時代を打破する「希望が持てる社会」を、新しい政権はどのように作っていくのか?
“落ちる”リスクばかりが高まり、“抜け出す”機会が、ほぼない、今の社会をどうやって変えていくのか?
それを教えて欲しい。
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image by: 首相官邸