何度聞いても理解不能。岸田首相が指す「中間層」とは誰のことか?

kawai20211006
 

岸田政権が政策の目玉のひとつとして挙げる「中間層の拡大」。従前の富裕層優遇と言っても過言ではない施策の見直しを評価する向きもありますが、そもそも首相は「中間層」の定義をどこに置いているのでしょうか。今回のメルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』では著者で健康社会学者の河合薫さんが、さまざまなデータを示しながら「中間層」という言葉がどれだけ曖昧であるかを指摘。その上で、ターゲットとなる層が見えない政策に共感するのは困難であるとし、新政権がまず提示すべきものについて考察しています。

プロフィール:河合薫(かわい・かおる)
健康社会学者(Ph.D.,保健学)、気象予報士。東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。ANA国際線CAを経たのち、気象予報士として「ニュースステーション」などに出演。2007年に博士号(Ph.D)取得後は、産業ストレスを専門に調査研究を進めている。主な著書に、同メルマガの連載を元にした『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアムシリーズ)など多数。

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希望なき社会の「分厚い中間層」

岸田内閣が発足しました。全閣僚20人のうち13人が初入閣で、中堅・若手の抜てきは目を引きますが、女性閣僚をあと2人くらい入れてれも良かったのでは?なんてことを思ったりもします。

「新時代共創内閣」との看板を掲げ、「令和版所得倍増」を謳い、総裁選にいち早く手を挙げたときから「分厚い中間層を作る」と豪語。

4日に行われた会見では、「子育て世帯の教育費・住居費の支援強化」「看護師や介護福祉士、保育士らの所得引き上げ」「大企業が強い立場を利用して納入業者に負担を強いる下請けいじめの監視強化」などを想定しているとし、徹底的に格差是正に取り組むとしました。

しかし、岸田首相の言う「中間層」とはいったいどの「中間層」をさしているのでしょうか? 何度聞いても、私には全くわかりませんでした。

例えば、所得で考えた場合、会社員の平均給与は436万円。性別では男性540万円に対し、女性は296万円とかなり少ない。雇用形態別では、正社員503万円に対し、非正規はたったの175万円です。かなりの格差です。

さらに、給与階級別分布を見ると、最も多いのが「300万円超400万円以下(17.0%)」で、次いで「200万円超300万円以下(14.9%)」と平均給与額を大幅に下回ります。

また、厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」(令和元年)を基に年収中央値を算出すると370万円程度。たったの「370万円」しかありません。

「令和版所得倍増」を謳うなら、最低でも中央値を600万円くらいにする必要があるわけですが、そんな力が今の日本企業にはたしてあるのでしょうか?

そして、もし中間層を「新中間階級」を想定しているとするなら、相当にハードルは高まります。

『新・日本の階級社会 https://www.amazon.co.jp/dp/4062884615』の著者・橋本健二氏が分析した、「新中間階級」のプロフィールは…

  • 就業人口の20.6%を占める
  • 平均年収は499万円
  • 世帯平均年収は798万円
  • 配偶者あり79.4%(男性)、68.2%(女性)
  • 高等教育を受けた人の比率が61.4%と際立って高い
  • 週平均労働時間は43.4時間で資本家階級(45.1時間)より短い
  • 貧困率は2.6%で資本家階級(4.2%)より低い
  • パソコンなどの情報機器の所有率も資本家階級を上回る
  • 自分を「人並み以上」と考える人は42.8%

など、かなり、本当にかなり「恵まれた人たち」です。

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