少女重体事故で注目。全国1万7千箇所の「勝手踏切」は即全廃すべきか？

一方で、全国で最もこうした「勝手踏切」が多いのは、愛媛県だそうですが、愛媛の場合は鉄道の整備が遅れた地域などで、生活道路を後から線路が横断したケースなども見られます。

この問題ですが、踏切がない場所で線路を渡ることは、鉄道営業法で禁止されているとか、運行に支障が生じた場合は、刑法の往来危険罪に問われる場合もあるとか、建前論からすると確かにそうかもしれません。ですが、江ノ電の線路に沿った住宅で、裏は崖だとか、愛媛の例えば予土線で見たことがあるのですが、裏が山になっていて、玄関の前を線路が通っているので、そこを渡らないとどこにも行けない家などもあるわけです。

この問題ですが、とにかく江ノ電の場合はかなりの危険性を感じます。単線ですが、12分ヘッドということは、1時間に上下合わせて10本の電車が走るわけです。また、線形にもよりますが50キロぐらい出すこともあり、結構なスピードです。それでいて単線ですから、歩行者からすれば左右どちらから電車が来るかは分からないわけです。とにかく1時間に10本というのは、かなりの本数であり、何らかの解決がされなくてはと思います。

例えば、法令を改正して簡易式の警報機の設置を可能にする、その上でそうした新型簡易踏切を利用する住民について、安全管理者を一軒について1名決めるとともに、鉄道事業者と住民による保険加入の枠組みを作るといった方法です。

その一方で、予土線の場合は、南半分では「上下線で1日8本」、北半分では「上下線で1日16本」しか列車は通りません。また、最高速度も特に北半分では遅い一方で、沿線は閑静な田園地帯ですから、列車の走行音も聞こえやすい環境です。危険性ということでは、江ノ電の100分の1もないのではと思います。また、線区そのものに費用負担能力はまったくなく、余計なインフラが必要ということなら廃線を早めるしかない、そんな状況です。

反面、同じ愛媛県でも、予讃線などは時速100キロ超の特急が疾走することもあり、そうした場合には勝手踏切については（まだあるようですので）真剣に根絶が必要と思います。

とにかく、この問題は全国各地で事情が異なります。都会で、ネットを見ているだけで、いわゆる遵法意識だけで善悪を論じても、結局は実情とは離れた議論になってしまうのではないかと思うのです。

（メルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』より一部抜粋）

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