実際の生活は確認できず。映画に漂う北朝鮮に渡った日本人妻の悲哀

 

私がこの映画を見た感想の総括になるのが、林恵子氏が北朝鮮で姉と一緒に他の日本人妻たちとも会い、日本に帰国して彼女たちの親族を探して訪ねて、自分と同じように、最初は驚きながらも勇気を出して北朝鮮まで行って再会できた感動を同じく経験してもらいたいという活動に出た場面が後半にある。

しかし、期待とは裏腹に家族の反対を押し切って北朝鮮に渡り、連絡が来てもお金の無心で愛想が尽き、音信普通にしていた中で、それまでの生活に波風を立たせたくないという冷たい反応であった。これがまさに日朝関係の現実である。

このことは日本に帰国した脱北者が、身元引受人に日本の親族を頼るときに多くが経験する現実である。映画に登場したその他の日本人妻たちは、一度は日本に帰国したいが、人生のほとんどを北朝鮮で過ごし、家族も北朝鮮にいることを考えると、年老いて無理に帰国するのは現実的ではないという哀愁漂いつつも、熟知している様子が印象的であった。

東京での映画鑑賞後、主人公の林恵子氏とその息子の林真義氏と話す機会があった。現在は、神奈川県に移り住み、「日本朝鮮にじの会」を発足し、活動を行っている。冷え切った日朝関係に一石投じる活動に期待したい。

今年は北朝鮮関連の映画が充実している。今後もこれから上映予定の映画についても鑑賞の感想を報告したい。(宮塚コリア研究所副代表 宮塚寿美子)

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