コロナ禍どさくさで電気料金「爆上がり」のナゼ。元国税が暴露する大幅値上げのウラ事情

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日本全国の家計を直撃している、電気料金の値上げ。その原因としてLNGの高騰などが上げられていますが、事はそう単純ではないようです。今回のメルマガ『大村大次郎の本音で役に立つ税金情報』では元国税調査官で作家の大村大次郎さんが、信じられないほどいい加減に運営されている電力事業の実態と、それでもメディアが一切批判的に報じない理由を暴露。その上で、電力会社の宣伝広告費と役員報酬に厳しい制限を設けるべきとの提言を記しています。

※本記事は有料メルマガ『大村大次郎の本音で役に立つ税金情報』の2021年10月16日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め初月無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール大村大次郎おおむらおおじろう
大阪府出身。10年間の国税局勤務の後、経理事務所などを経て経営コンサルタント、フリーライターに。主な著書に「あらゆる領収書は経費で落とせる」(中央公論新社)「悪の会計学」(双葉社)がある。

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電気料金爆上がりの謎

実はこの1年間で、電気料金が爆上がりしているのをご存じですか?

この11月も値上げが決定しており、平均的家庭の年間の値上がり率は各社とも10%を超えています。東京電力などは17%も値上がりしているのです。

この値上がりについて昨今の報道では「液化天然ガスなどの燃料の高騰による」とされています。確かにこの数か月の値上がりについては、燃料の高騰が原因です。しかし、燃料の高騰は10%以上の値上がりのほんの一部分に過ぎません。値上がりの最大の理由は、再生可能エネルギーへの転換費です。電力会社は再生可能エネルギーへの転換が義務付けられており、その費用を今年から電気料金に上乗せすることになっていたのです。つまり、電気料金の値上げは、最初から決まっていたことなのです。

消費者から見れば、新型コロナのどさくさに紛れて、電気料金を値上げしたような感じがします。いや、実際にどさくさに紛れて値上げしたというのは本当のところかもしれません。10%以上の値上げというのは相当なものです。本来ならもっと文句が出てもいいはずです。が、世間が新型コロナに気をとられており、電気料金のことにまでなかなか目がいきませんでした。

そもそも日本の電気料金というのは、非常に不透明というか、曖昧な方法で決められています。

電力料金は、電力会社が勝手に決められるものではありません。電力会社が政府に申請し、政府が認めた料金が、電気料金ということになります。しかし、この電気料金は、事実上、電力会社の言い値になっているのです。そして、その算定基準はというと「総括原価方式」という方法が採られています。これは、電力会社が、税金、燃料費、人件費、設備取得費用、株主への配当金なども、費用として算出し、これを「電気料金の原価」ということにします。

電力会社は、どれだけ設備投資をしても、人件費をかけても、必ずそれを支払えるだけの料金設定がされるのです。

つまり、電力会社というのは、かかった費用が必ずペイできるような仕組みになっており、どれだけ費用をかけてもいいという特権を持っているのです。

もちろん、政府もある程度は監視します。しかし、電力会社のような巨大組織の経費について、いちいち細かい査定は不可能です。だから、ほぼ電力会社の要望通りの額が、電気料金として認められることになります。先にご紹介した関西電力の裏役員報酬なども、国のチェックをすり抜けて原価として計上され、電気料金に上乗せされていたわけです。

莫大な広告費で批判を封じ込める

電力会社は、高い役員報酬など批判されるべき点は多々あるのですが、あまりメディアで批判されることはありません。それは、電力会社が莫大な広告費を使っているからです。

この電力会社の広告費は、福島第一原発事故のときに世間から批判されました。福島第一原発の事故が起きる前の2011年3月度の決算によれば、電力会社10社の広告費の合計額は866億円でした。これは日本最大の民間企業トヨタの約2倍です。
テレビ、ラジオ、新聞、雑誌にとっては、電力会社は「超VIP」ということになります。もちろん、電力会社の批判などはそうそうできるものではありません。そして電力会社は、原発の安全性を大々的にPRしてきました。そのあげくに、福島第一原発の事故が起きたのです。

そのため、福島の原発事故以降は、いったん、電力会社の広告費は減少しました。しかし、最近になってまた電力会社の広告は増えてきており、ほぼ福島原発事故前の水準に戻っています。だから、電気料金の値上げについても、批判するメディアはほとんどなかったのです。

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