江戸の暮らしにヒントあり。日本人の伝統的生活こそ人類の未来

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先日掲載の「日本は生き残れるか?中国の『孤立』と共にグローバリズムは終焉する」では、グローバリズム終結後の世界を覆うであろう潮流を大胆に考察した、ファッションビジネスコンサルタントの坂口昌章さん。今回のメルマガ『j-fashion journal』で坂口さんはその論考をさらに深め、「人類の未来の可能性は日本の伝統の中にある」と言い切ります。その主張を支える根拠は、我々日本人が膝を打ち納得できるものでした。

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「機能の時代」から「象徴の時代」へ

1.グローバルからローカルへの転換

現代社会の「モダン」な製品デザインの基礎を作り上げたのはドイツのバウハウスであり、無駄な装飾を廃して合理性を追求することを特徴としていた。

世界共通の価値観は、グローバリズムに発展した。そして、「世界の工場」として中国が確固とした位置を占め、世界は中国を軸にしたグローバリズムで覆われた。

しかし、コロナウイルスによって、中国を軸にしたグローバリズムは崩壊した。現在、欧米では欧米を軸とした新しいグローバリズムを志向しているようだ。その代表例がワクチンとICTである。

私は、もう一つの方向があると考えている。それは、グローバリズムからローカリズムへの転換である。一つの地球ではなく、世界は国家や民族、宗教により分裂が進んでいくのではないか。

2.江戸時代のライフスタイルはSDGs

日本は、コストを別にすれば、自動車からワクチン、伝統工芸に到るまで何でも作れる国である。そして、農業、漁業、林業等のノウハウも残っている。地産地消が可能な希有な国と言えるだろう。

グローバルからローカルへの転換は、無国籍なデザインから、アイデンティティに基づくデザインへの転換を引き起こすだろう。

日本の伝統的なデザインは、色やモチーフ等の全てに意味がある。きものの柄の多くは縁起の良い柄である。そして、お節料理で使われる全ての食材は縁起が良いもので、しかも健康的にも優れたものだ。

考えて見れば、江戸時代の日本人の生活はSDGsに合致したものだった。ほぼ完全なリサイクル社会であり、玄米、魚、野菜、キノコ、発酵食品の食事をして、持続可能な木の家に住んでいた。化石燃料は使わず、化学物質も使わない。完全なオーガニック生活であり、多くの人は哺乳類の肉を食べなかった。

現在、世界が行き詰まっていると感じているのは、西欧的ライフスタイル、狩猟民族の肉食生活が行き詰まっているに過ぎない。日本人の伝統的ライフスタイルはある意味で現代社会の理想といえよう。人類の未来の可能性は、日本の伝統の中にあるのだ。

3.強欲な国際標準

日本は、世界の中で、唯一神を信じていない特異な国である。絶対的な善もなければ、絶対的な悪もない。人間は自然の一部であり、生かされているに過ぎないと考える。世界から見ると日本は圧倒的にユニークだ。

世界は一つと考えると、日本の独自性には意味がなくなる。むしろ、国際標準に合わせるべきだと西欧から強制された。

しかし、国際標準の思想は強欲であり、不健康であり、破壊的である。日本人にとって、日本のアイデンティティを大切に暮らすことが持続可能で健康的なのだ。

万物に神が宿る自然を壊さず、人間は謙虚に生きなければならない。そして、自分のことよりも、相手のことを考えることで、社会は円満に回っていく。一人だけが富を集めるのではなく、富は広く配分すべきものである。

こうした日本人のDNAに刻まれた原則に従って、生きていくことが重要なのだ。これが世界の理想ならば、こういう日本の価値観をテーマにしたブランド、商品、サービスが世界市場でも評価されるのではないか。

ファッションの世界でいえば、これまでは世界共通のトレンド情報を基本に商品企画を行ってきた。しかし、今後は日本というローカルな文化に根ざした方が、結果的に世界市場に訴求できると思う。

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