4.日本古来の「象徴の時代」へ
日本文化の特徴は、全てのモノが何らかの象徴であること。これは漢字という象形文字や、言葉が持つ霊力を大切にする「言霊」という考え方にも共通している。日本人にとって一つの音や一つの文字にも意味があるのだ。当然、自然界の中の全ての事象を注意深く観察し、そこに何らかの意味や法則を見いだそうとすることになる。象徴的であっても、西欧社会のように、宗教的教義から導き出すのではない。あくまで自然観察から象徴を見いだすのである。その意味では、科学的な観察と思考がその基礎になっているともいえる。
例えば、台風や地震などの自然災害であっても、悪魔の仕業とは考えない。そもそも悪魔という概念は存在しない。人間に害を与えても、それは荒ぶる神、人知を超えた存在であり、崇敬するべきと考えるのである。
私たちは、グローバルな「機能の時代」から日本古来の「象徴の時代」へと回帰しようとしている。
マーケティング戦略、商品開発戦略についても、「象徴の時代」に対応したものにするべきと考える次第である。
編集後記「締めの都々逸」
「独自文化を 振りかえ見れば 眠る大きな 宝船」
日本の伝統や文化を商品化するのは、日本人にとって、どこかおこがましく、恥ずかしいものです。伝統的な分野にはそれぞれ達人や名人がいて、素人が口出しできる雰囲気ではありません。
しかし、日本人が世界に誇れるのは、日本の文化や伝統以外にはないんですよね。考えてみれば、西欧から伝来したものは、どれも怪しいものです。資本主義も西欧医学も、日本人にはしっくりきません。
自然の中で生きている私たちは自然の中に解決策を見いだすべきであり、人工のものが自然のものに勝てるわけないと、どこかで思っているんです。
さて、定年の年齢を過ぎて、ようやく照れずに日本文化と向き合うことができるようになりました。日本文化をベースにしたファッションブランドを提案したいな、と思っています。(坂口昌章)
ファッション業界からビジネス全体を俯瞰する坂口昌章さんのメルマガ詳細・ご登録はコチラ
image by: Shutterstock.com