武田教授が告発、「憲法違反」の選挙制度が凋落させた日本の政治

shutterstock_2068399847
 

11月10日、先月末の衆院選を受け招集された特別国会。この日をもって第2次岸田内閣が発足しましたが、そもそも衆院総選挙を「憲法違反」とする声もあるようです。今回のメルマガ『武田邦彦メールマガジン「テレビが伝えない真実」』では中部大学教授の武田邦彦さんが、衆院選において国が犯し続けているという「3つの憲法違反」を挙げ、そう判断せざるを得ない理由を解説。日本の政治レベルが極端に低い状態にあるのも、まともな選挙が行われないためであると断言しています。

武田教授のメルマガご登録・詳細はコチラ

 

国民が人を選ぶことが“できない”総選挙。国が犯す3つの憲法違反とは

10月末に衆議院議員選挙が行われた。すでに4年の任期が過ぎているので、岸田新首相の下で特別な争点はない状態で選挙が行われた。

この選挙は「憲法違反の選挙」であり、報道も正しくなかった。その状態と結果を考えたい。

まず第一に「小選挙区制」という選挙制度そのものが憲法違反であるということだ。憲法では「党」というのはまったく記述がない。選挙は国民が「候補者」を選びその人が「代議士」として国民の代わりに国会で政策や法律などを決める。あくまでも日本の選挙は「人」を選ぶ選挙であって、党は関係ない。「党」は選挙で選ばれた人が国会で活動するのに、都合の良い時には「党を作っても良い」という位置づけである。

それなのに著者の選挙区でも候補者は2人か3人、保守系が1名、野党が1名ということだから、政治的な方向性は何とか合致しても、「人」を選ぶことはまったくできない。「人」を選ぶと言いながら選ぶ対象の人が2人というのは誰が考えても不合理だ。でも政治家が自分の子供を政治家にするために屁理屈をこねた結果を誰も覆すことができないのが現在の日本である。

さらに酷いことには、野党は「選挙協力」ということで政党間で調整して1人に絞る。野党が複数いるのは「政治的主張が異なる」からであり、今回のように「立憲民主党」と「日本共産党」が候補者を調整するということは政党側の勝手な党利党略であって、選挙民から見ると立憲民主党に投票しようとしている人は「どうする?」ということになる。まったく選挙民をバカにした話である。

せめて、自民党が4、5名、主要な野党は候補者がいる状態でなければ、到底「国民が選ぶ」ということにはならない。

次の問題はよく言われることだが、国民が選挙して落選したという候補者が比例区で「復活当選」するという、これもあり得ないことだ。「ゾンビ当選」と言われるがまさに「国民が落選させた候補者を当選とする」という非常識な制度であることを的確に表現している。こんな不合理なことが制度を決めることができる国会で行われているのは、すでに日本で「正義」が議論もされず、実施もできなくなっているといって良いだろう。

三番目の憲法違反は、立候補の供託金が法外に高いことだ。衆議院選挙に立候補するためには600万円という大金が必要である。これは国際的にもあり得ない額で、数カ所の特殊な国は別にして普通は10万円以下か高くても数十万円である。

供託金を高くしているのは、泡まつ候補を減らすとか、街に選挙カーが溢れないようにするなどと説明されているが、供託金が少ない国でそういう状態が発生している事実はない。しかも日本社会は評判を気にするので、諸外国より供託金が安いからと言ってそのような状態が発生するはずもない。これは憲法が保障する「お金がなければ公的な権利を失う」ということにはっきりと反している。

つまり、現在の小選挙区比例代表制や供託金という制度は選挙権ということでも被選挙権ということでも憲法違反であり、それを修正する力は現在の日本社会はすでに失っているのである。

最近の国会の議論のレベルが著しく低下していることは多くの人が認めることだが、まともに選挙が行われず、政党の党利党略で候補者になり、二世議員が幅を利かせている状態でレベルの高い政治が行われるはずもない。その結果、外交、経済など高度な政治課題については国際的にも極端に貧弱な状態が続いている。

武田教授のメルマガご登録・詳細はコチラ

 

print
いま読まれてます

  • 武田教授が告発、「憲法違反」の選挙制度が凋落させた日本の政治
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け