イスラム国は中国をも敵視。米に代わってテロの標的になる習近平

2021.11.16
 

アフガンに多数存在する中国を敵視するイスラム過激派

だが、イスラム国ホラサン州だけでなく、アフガニスタンには中国を敵視するイスラム過激派が多く存在する。9.11同時多発テロを実行したアルカイダの残党勢力、アルカイダを支持する「インド亜大陸のアルカイダ」、中国西部新疆ウイグル自治区の分離独立を目指す「東トルキスタン・イスラム運動」などは依然としてアフガニスタン国内において数百人レベルで活動しており、中国のアフガニスタンへの影響力拡大は必然的に反中テロの増加を招く。

そして、それを連想させる出来事は、既にパキスタンで長年発生している。最近でも8月、西部バルチスタン州グアダルで中国人が乗る車列に対する自爆テロがあり、中国人1人が負傷した。このテロでは、地元の武装勢力「バルチスタン解放軍」が犯行声明を出したが、バルチスタン解放軍は長年中国の一帯一路権益へのテロを断続的に続けている。2018年11月には、最大の都市カラチで武装した集団が中国領事館を襲撃し、警察官2人を含む4人が死亡した。その後、バルチスタン解放軍が犯行声明を出し、中国が地元の資源を搾取し続けているので、それを停止しない限り攻撃を続けると警告した。

また、今年7月には北西部カイバル・パクトゥンクア州で中国人技術者たちが乗るバスが谷に転落して多くの中国人が死亡した事件で、パキスタン治安当局はイスラム過激派「パキスタン・タリバン運動」の戦闘員が爆発物を積んだ車両でバスに突っ込んだと発表した。さらに、今年4月には、バルチスタン州クエッタにある高級ホテルで爆発テロが発生し、パキスタン・タリバン運動が犯行声明を出した。当時、このホテルは駐パキスタン中国大使の宿泊先だったが、同大使は当時ホテルにはおらず難を逃れたという。パキスタン・タリバン運動はアフガニスタンのタリバンとも関係があるだけでなく、バルチスタン解放軍との関係を強化しているとみられ、中国の同地域への影響力拡大は反中テロの増加を招くことだろう。

中国がタリバンとの関係強化を求めているもう1つの理由

一方、中国がタリバンとの関係強化を求めている理由はもう1つある。それは、上述した東トルキスタン・イスラム運動をタリバンとの協力のもと弱体化させ、新疆ウイグル自治区における分離独立の動きを消したいからだ。国連のレポートによると、東トルキスタン・イスラム運動は中国との国境付近を中心に500人程度が活動しているとされるが、中国はアフガニスタンが再び不安定化し、東トルキスタン・イスラム運動が中国国内で活動を活発化させることを警戒している。しかし、タリバンの中には米国と積極的に和平交渉を進める穏健派もいれば、アルカイダや東トルキスタン・イスラム運動などのイスラム過激派と密な関係にある強硬派も少なくない。よって、中国がタリバンと関係を強化したところで、果たしてどこまでテロ問題で効果があるかは分からない。

新タリバン政権のアフガニスタンを巡って、米国に変わって中国がテロの標的になるリスクが高まっている。

image by: Mark Time Author / Shutterstock.com

アッズーリ

専門分野は政治思想、国際政治経済、安全保障、国際文化など。現在は様々な国際、社会問題を専門とし、大学などで教え、過去には外務省や国連機関でも経験がある。

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