竹中平蔵の起用は“逆走”だ。京大教授が指摘する岸田首相「決別」のウソ八百

 

そもそもこの総理声明には、様々な批判を避けるために通常は、可も無く不可も無いような、曖昧でいい加減な玉虫色の言葉が並ぶのが通例です。だから、「間違っている!」というツッコミがいれにくいものとなっているのが通例なのですが──誠に残念ながら、今回の岸田さんの声明文は、あからさまに、根本的に、メッチャクチャに間違っている内容が含まれていたのです。

当方が、「岸田さん、こんなこといっちゃぁ、ダメでしょ、これ完全アウトっすよ……」と感じたのは、以下の一文です。

日本全体の生産性を引き上げていく、そのため、デジタル、グリーン、そして人材への投資を重点的に行ってまいります。

一般の方ならこれがそんなに間違ったものだとは分からないかも知れません。っていう、あ、それ以前に、何をいっているのかハッキリ分からない、と言う方もおられるかも知れません。

以下、詳しく解説しましょう。

まず、この文章は(背景も含めて簡潔に説明すると)次の様な事を言っているものです。

  1. 今の日本の生産性は低い
  2. これが日本の成長を妨げている
  3. だから、デジタル・グリーン・人材への投資を重点的に行い、それを通して日本の生産性を上げ、そして成長を導いて参ります

多くの人はこれを聞いて、「ふむふむ」「まぁそれはそうだよね」と思うと思いますが……これは凄まじい勘違いなのです!!!

そして、この勘違いのせいで、今の日本は成長出来なくなっているのであり、かつ、生産性が低迷為てしまっているのです!

つまり、岸田氏は、「デジタル・グリーン・人材への投資を行う事で生産性を上げて、成長を導いていきます」という考え方のせいで、日本は成長出来なくなり、生産性が引き下がっている、という文字通り「馬鹿丸出し」の見解を公言している、という次第なのです!

そもそも、労働生産性というのは、労働者が1時間あたりに産み出した付加価値の量、と定義されますが、別の言い方をすると、労働者が1時間働いて、どれだけ稼げるのか、を意味するものです(決して1時間に鉛筆を何個つくれるかとか、おいしいラーメンを作れるか、ということではないのです!)。

したがって、普通、労働生産性が高い人は、低い人よりも、優秀で能力が高い、という風に思いがちですが、全くそうではないのです。

なぜなら、貧乏な国では、どれだけ優秀な人物でも、1時間あたり大きく稼げませんが、裕福な国では、どれだけ無能な人でも、1時間あたりたくさん稼ぐことができます。

例えば、今、欧米ではラーメン屋のバイトで1時間あたり、2,000~3,000円稼ぐ事ができますが、日本で同じチェーンのラーメン屋でも、バイトで1時間あたり1,000円弱しか稼げません。しかしそれは決して、欧米人の方が、日本人よりも「優秀」であることを意味しません。ただ単に、欧米の方が、ラーメンの単価が高いということを反映しているだけだからです。

だから、生産性を上げるには、デフレを脱却させ、人々がたくさんのお金を使うような状況を作り上げる他ないのです。

そしてそのためには、(PB規律という国債発行額の抑制規律を凍結し)今日の需要不足を解消するための政府支出拡大を図る他ないのです。

それさえ出切れば、日本経済は成長していき、その「帰結」として、自ずと生産性(1時間当たりの稼ぎ)が向上していく事になるのです。

つまり、生産性向上のために必要なのは、PB規律の凍結であり、デフレ脱却までの政府支出の拡大をおいて他に何もないのです!

……それにも関わらず、多くの日本人、とりわけ、政治家やエコノミスト、専門化、官僚達は、「労働生産性」を「労働者の優秀さ」「企業の優秀者」と勝手に読み替えて、ITを導入したり、リストラしたり、M&Aを繰り返したりという、本来成すべき取り組みではない取り組みを行うべきだと主張し続けているのです。

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