北京五輪に「全面ボイコット」の可能性浮上。テニス選手不明事件で広がる中国不信

 

加えて、民主主義サミットでは、人権尊重の促進がテーマということもあって、ウイグルや香港問題に加え、テニスプレーヤーの彭帥氏に対する共産党幹部の性的関係強要問題、その後の失踪問題も議題として登る可能性もあります。

中国側がさかんに彭帥氏について「元気で問題ない」とアピールしているのは、来年の北京冬季五輪もさることながら、この民主主義サミットを意識してのことでしょう。

言うまでもなく、民主主義において最重要視されるのが人権であり、その価値を共有している国々が集まることで、北京冬季五輪への「政治ボイコット」への流れが加速する可能性もあります。中国としては、それはどうしても避けたいことでしょう。

彭帥氏はIOCのバッハ会長とテレビ電話会談をして自身の身の安全を証言したとのことですが、もちろん、それをお膳立てしたのは中国当局です。なぜバッハ会長と会談させたかといえば、北京五輪のこともありますが、五輪憲章には最重要の項目として人権尊重が謳われていますから、バッハ会長にお墨付きを与えてもらうことで人権問題もクリアしたということで、民主主義サミットを牽制しようとしたのでしょう。

とはいえ、中国とバッハ会長は五輪開催で利害共有関係にあるため、かなり露骨な結託でした。バッハ会長が中国の人権問題に疑念を抱いて、五輪を中止にすることなどありえないからです。とはいえ、国際的に評判が良くないバッハ会長をアリバイ作りの共犯にしたのは、逆効果だったようです。WHOのテドロス事務局長と同様、中国の金に丸め込まれたという評判がもっぱらだからです。

共和党米議会下院の外交委員会で共和党の筆頭委員であるマイケル・マコール議員は、IOCとバッハ会長について「中国共産党による虐待に積極的に参加している」と強く批判しています。

米共和議員「IOC、中国の虐待に参加」 テニス選手巡り

国際人権団体のアムネスティ・インターナショナルも、ヒューマン・ライツ・ウオッチも、IOCに対して「中国政府のプロパガンダの役割を果たしている」と批判しています。誰もが彭帥氏とバッハ会長のテレビ電話会談は「茶番」であり、まったく信用していないということです。

IOC、中国テニス選手との電話で限界露呈 中立性は支持されず

もしも彭帥氏の身の上が本当に安全だったとしても、中国は情報を隠蔽しすぎました。彭帥氏の微博を閉鎖し、外国メディアの報道を人民に伝われないようにシャットアウトし、本人には自由に語らせない。だから誰も信じないのです。そしてその不信感はウイグルや香港での人権弾圧にも及びます。

中国とIOCへの不信感は、いずれ北京五輪の選手のボイコットまで発展する可能性もあります。あれだけ「多様性」が謳われた東京五輪の次が「人権弾圧」の北京五輪では、何のための五輪なのか、その意義すら失いかねません。参加するアスリートにとってもかえってイメージダウンでしょう。

すでにカナダ紙「グローブ・アンド・メール」は、11月23日、米英が検討している外交ボイコットは派遣選手を人質に取られる危険があるとして、全面ボイコットすべきだという、カナダの元外交官の論評を伝えました。

北京五輪全面ボイコットを 選手「人質」とカナダ紙論評

カナダはファーウェイの孟晩舟副会長を逮捕した際、中国にいるカナダ人が逮捕されるという「人質外交」を経験しているだけに、何をされるかわからないという危惧を抱いているのでしょう。

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