米軍基地だけじゃない。沖縄の人さえ知らぬ「国連軍基地」の存在

shutterstock_1995464978
 

1996年4月の基地返還合意から25年が過ぎても、未だ危険な普天間基地が閉鎖されず、メディアも「辺野古問題」としてしか扱わない沖縄の基地問題。膠着状態が続く根本原因の一つに、当事者である沖縄県民も沖縄米軍基地について、基礎知識すら持たないままでいることを上げるのは、軍事アナリストの小川和久さんです。今回のメルマガ『NEWSを疑え!』で小川さんは、自著『フテンマ戦記 基地返還が迷走した本当の理由』の記述を引用し、県庁の基地対策課も、抱える自治体の一つである嘉手納町役場も、沖縄県内にある「国連軍基地」の存在を知らなかったという残念な事実を伝えています。

軍事の最新情報から危機管理問題までを鋭く斬り込む、軍事アナリスト・小川和久さん主宰のメルマガ『NEWSを疑え!』の詳細はコチラから

 

キミは沖縄の国連軍基地を知っているか

毎年、今の時期になると1995年9月4日に沖縄で起きた少女暴行事件と、それを受けた琉球放送の番組のことが思い出されてなりません。このいたましい事件が、1996年4月の普天間基地返還合意へとつながっていったからです。

それから25年が経過し、政府が推し進める辺野古移設案が軟弱地盤問題などで視界不良となるなか、原点である普天間基地閉鎖による危険性の除去は忘れ去られ、いつの間にかマスコミでも「辺野古問題」として取り扱われるようになっています。

普天間基地移設問題が膠着している根底には、米軍側の作戦所要を満たさず、建設面からも課題の多い辺野古案をごり押しする政府側の問題があることはいうまでもありません。

しかし、政府がどんな姿勢を示そうとも、それを正していく力が国民の側になければ、無理無体がまかり通ってしまうのは防ぎようがありません。その国民の側がどんな状態だったのか、それを示すエピソードを拙著『フテンマ戦記 基地返還が迷走した本当の理由』(文藝春秋)から引用しておきたいと思います。

「この年(注・1995年)の12月は2回、私は琉球放送の企画のため沖縄各地を歩いた。玉城朋彦キャスターが同行してくれた。それ以来、玉城氏を通じて沖縄のキーパーソンとの関係を築いていくのだが、残念なことに玉城氏は2016年2月2日、59歳で歿した。

 

企画についての琉球放送側の意図は、沖縄米軍基地の実態、そして日米同盟の実像を沖縄県民に正しく伝え、平和に向けての姿勢を正して行こうというものだった。これは玉城氏だけでなく、上司である大城光恵(みつよし)常務の意向だった。

 

そのおり、いたずら心もあって、私は移動中のワゴン車内から玉城氏に3カ所への電話取材を依頼した。沖縄県庁の基地対策課、嘉手納町役場、浦添市にある米国総領事館である。質問は、沖縄県内にある国連軍基地について知っているかどうかだった。

 

言うまでもなく、沖縄県内の国連軍基地は嘉手納、普天間、ホワイトビーチの3カ所である。これは公表されている。だが、残念なことに、嘉手納基地に日米の国旗と国連旗が翻る嘉手納町の役場も、毎年、沖縄の米軍基地に関する報告書を出している沖縄県庁も、どこが国連軍基地なのか全く知らなかった。それとは逆に、米国総領事館は電話に出た館員のレベルでも即答があった。

 

このように当事者意識を欠いていては米軍基地問題を扱えるわけがない。その認識を琉球放送側と共有した点で、極めて有意義な電話取材となった。玉城氏も、沖縄県と嘉手納町の有様を目の当たりにして、深刻な顔になった」

それまでにも、沖縄県民は基地問題について強い姿勢を示してきたことは間違いありません。しかし、その実態は沖縄米軍基地についての基礎知識すら持たないままの、政府や米国側から見れば「遠吠え」のような状態に終始してきたのです。

普天間基地返還合意から25年という時間も、大部分が「遠吠え」のような実効性を持たない形式的な抗議のうちに過ぎてきはしなかったか、と思わざるを得ません。リアリティを備えた議論によって問題を解決していくために、今年も言わせていただきました。(小川和久)

軍事の最新情報から危機管理問題までを鋭く斬り込む、軍事アナリスト・小川和久さん主宰のメルマガ『NEWSを疑え!』の詳細はコチラから

 

image by: Shutterstock.com

小川和久この著者の記事一覧

地方新聞記者、週刊誌記者などを経て、日本初の軍事アナリストとして独立。国家安全保障に関する官邸機能強化会議議員、、内閣官房危機管理研究会主査などを歴任。一流ビジネスマンとして世界を相手に勝とうとすれば、メルマガが扱っている分野は外せない。

有料メルマガ好評配信中

  初月無料お試し登録はこちらから  

この記事が気に入ったら登録!しよう 『 NEWSを疑え! 』

【著者】 小川和久 【月額】 初月無料!月額999円(税込) 【発行周期】 毎週 月・木曜日発行予定

print
いま読まれてます

  • 米軍基地だけじゃない。沖縄の人さえ知らぬ「国連軍基地」の存在
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け