悲観論から超楽観論まで。オミクロン株が握るバイデン政権の命運

 

現状はそんなところですが、全体的な感染状況について、オミクロンに関しては、アメリカの報道としては
1)南アの当初報告、英国の大量データ分析を受けて、オミクロンの症状は「ワクチン接種者」に関しては重症化率は低い。「ブースター(3回目)」接種者の場合はもっと低い。
2)子供が感染するというが、無症状感染拡大の懸念はあるものの、重症化は極めて少ない。
3)ただし、確かに感染率は高い。デルタの4倍というのも実感として近いものがある。
というのはほぼ合意事項となっています。では今後ですが、これにはいろいろな見方があります。

4)ワクチン未接種者については、オミクロンでも重症化する。オリジナルやアルファの罹患者で抗体があっても、ワクチンゼロだと危険。従って、当面は相当な対策を続けないと死者が増加する危険はある。
というのが悲観論スタンスですが、一方で、

5)ワクチン+ブースターに加えて、オミクロンの罹患者(多数の無症状を含む)が巨大な抗体の集団を作り上げて、最終的には南アで見られたような集団免疫状態に達する。その時期は早ければ1月末。
などという楽観論もあります。更には、 6)オミクロンはデルタを完全に置き換え、しかも罹患者の抗体はデルタにも効くので、3月までには「コロナ全体が収束」。
などという超楽観論もあります。そして、このシナリオも、完全には排除できないようです。

政局に関して言えば、現状の延長ですと、あと10ヶ月後に迫った2022年11月の中間選挙については、バイデン政権の民主党は非常に不利だと言われています。

具体的には、「コロナ疲れの不満」「インフレへの不満」のダブルで、世論が現政権にソッポを向いているからです。バイデン政権の支持率(例によって、リアル・クリア・ポリティクスによる主要な世論調査の平均値)ですが、
支持………42.9%
不支持……53.5%
ということで、完全に危険水域に入っています。これでは選挙は戦えないというのが常識的な見方です。ですから、バイデンは「1月6日の議事堂乱入1周年」を契機に「トランプ派を徹底的に断罪」したり、ウクライナを舞台に「ロシアとホットな睨み合い」をしたり苦心の政局運営をしているわけです。

また、現職有利、そして有色人種の投票には不利な選挙制度と区割りが、各州、特に保守州で進行しており、テクニカルにも共和党は有利なポジションにあるという見方もされています。

ですが、仮に、オミクロンが、悪魔ではなく救世主であり、「COVID19」パンデミックの幕引きをするために登場した存在であるならば、現在の経済社会の状況が一変する可能性はゼロではありません。インフレも厄介ですが、仮に完全に収束というムードになれば、労働力不足は相当程度に解消される可能性もあります。

そんなわけで、数字的には現在のアメリカは「最悪期の再来」ということになります。ですが、この先がどうなるかについては、超悲観論だけのカードを持っているのでは、全ての可能性をカバーするには足りないように思えます。

政治経済からエンタメ、スポーツ、コミュニケーション論まで多角的な情報が届く冷泉彰彦さんのメルマガ詳細・ご登録はコチラ

 

image by:BiksuTong / Shutterstock.com

冷泉彰彦この著者の記事一覧

東京都生まれ。東京大学文学部卒業、コロンビア大学大学院卒。1993年より米国在住。メールマガジンJMM(村上龍編集長)に「FROM911、USAレポート」を寄稿。米国と日本を行き来する冷泉さんだからこその鋭い記事が人気のメルマガは第1~第4火曜日配信。

有料メルマガ好評配信中

  初月無料で読んでみる  

この記事が気に入ったら登録!しよう 『 冷泉彰彦のプリンストン通信 』

【著者】 冷泉彰彦 【月額】 初月無料!月額880円(税込) 【発行周期】 第1~第4火曜日発行予定

print
いま読まれてます

  • 悲観論から超楽観論まで。オミクロン株が握るバイデン政権の命運
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け