悲観論から超楽観論まで。オミクロン株が握るバイデン政権の命運

shutterstock_1936368718
 

アメリカではオミクロン株の新規感染者数が爆発的に増加していて、NY州では連日5万人超というデータが発表されています。米国の教育現場を揺るがし、政治経済にも大きく影響しそうなオミクロン株の現状と今後はどう見られているのでしょうか。今回のメルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』では、米国在住の作家・冷泉彰彦さんが、伝えられている悲観論から超楽観論までを提示。ウクライナでロシアと対峙し演出するバイデン政権の支持率低迷対策も、結局はオミクロン次第と、先行き不透明な2022年を占います。

※本記事は有料メルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』2022年1月4日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。

政治経済からエンタメ、スポーツ、コミュニケーション論まで多角的な情報が届く冷泉彰彦さんのメルマガ詳細・ご登録はコチラ

 

先行きは不透明、オミクロンの動向とアメリカの政治経済

新しい年が明けましたが、アメリカの現状は再び「コロナの闇」に包まれた格好です。2021年の1年かかって、反対派と闘って必死になってワクチンを打ち、デルタと死闘を繰り広げて、なんとか一息というところで、オミクロンが殺到してきたからです。

新年早々、深刻なお話をするのは気が引けるのですが、本稿の時点ではどうにもこうにも動きが取れなくなってきています。NY(州)では連日の新規陽性者が5万人台ですし、私の住むニュージャージーでは、それこそ年末年始もぶっ通しでPCRや抗原検査をやっていますが、人口900万で毎日2万の新規陽性者が出ています。その過半数はオミクロンのようです。

本稿の時点でもニュージャージー州だけで、入院4715、ICU644という数字ですから、非常に厳しいと言えます。ですが、2020年の状況とは社会的な風潮が大きく異なっています。まずもって、「ロックダウン」を行うということには、全米のある種の合意として「ノー」というのが前提になっています。ですから、オミクロンが深刻化する中で、株価は大きくは下がっていません。年末年始の旅行者もパンデミック前に近い水準に戻っています。

つまりアメリカの場合、経済は「ほぼノーマル」で突き進む構えです。一部のテック関連では、「在宅からオフィスに戻すのを遅らせる」動きがありますが、これは従業員側からの強い圧力が続いているためで、経営陣としては「オミクロンを口実に」妥協に応じたということで、そもそも景気には関係はほとんどありません。

一方で、影響大なのが教育です。多くの大学は、一般の願書締め切り(レギュラー選考)がほぼ完了(一部、1/15、2/1もあり)しており、選考作業が佳境に入っています。同時に3月の合否発表、5月の入学意思表明の締切を見据えて、受験生は「進学先を真剣に考えている」状況でもあります。

ですから、ここで「クラスター発生」という「スキャンダル」を出すと、受験生と保護者の信用を失うことになりかねません。そこで、各大学は猛烈にナーバスになっており、例えばプリンストン大学などの場合は、「帰郷中の学生が再入寮」する日を先延ばしして様子を見ています。

公立学校の場合は多少様子が違っており、丸2年近いパンデミック対応に保護者は疲弊しており、子どもの教育への影響も心配だということで、とにかく「学校を閉めてオンラインにする」ことには強い抵抗があります。これに対して、教職員組合は「ブレイクスルー感染(ワクチン接種しても感染)」が懸念されること、オミクロンの場合は「子どもに感染しやすく、無症状で感染拡大を媒介」することから、非常に慎重な姿勢を取っています。

そんな中で、就任したばかりのNYのエリック・アダムス市長は、「変異株が出るたびに学校を閉めていてはキリがない」などと、民主党右派的な「世論迎合」を強めており、これに対して教職員組合は「当面18日までのオンライン授業」実施を求める仮処分を裁判所に訴え、両者はガチンコ対決になっています。

政治経済からエンタメ、スポーツ、コミュニケーション論まで多角的な情報が届く冷泉彰彦さんのメルマガ詳細・ご登録はコチラ

 

print
いま読まれてます

  • 悲観論から超楽観論まで。オミクロン株が握るバイデン政権の命運
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け