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我が社を「ビジョナリー・カンパニー」にするためにやるべきこと

ビジョナリー・カンパニーという言葉を耳にしたことはありますか?ビジョナリー・カンパニーとは世界で卓越した企業であり、社歴が長く、世界で認知されている企業を指すそうです。今回のメルマガ『戦略経営の「よもやま話」』では、著者の浅井良一さんが、そんなビジョナリー・カンパニーの定義と、自分の企業を育てるためにやるべきことを語っています。

時を告げる組織 経営(基本)理念の威力

GEのジャック・ウェルチのことから話を始めます。「20世紀最大の経営者」と呼ばれた人物ですが、個人的な才能が抜きん出ていすぎたたために後継者が追随できず企業業績は落ちました。そんな彼ですが“組織づくり”には並々ならぬ意を尽くし「学習する文化」の構築にこだわり続けました。

「学習する文化」とは「最高のアイディアがどこにあるのか見つけ出し実行せよ」というもので、それは経営者の思い込みである「自分たちは何でも知っている。他の誰からもそしてどこからも改め学ぶ必要はない」という頑迷さからの脱却をめざしたもので、内外を問わず活用可能な“知識”を見つけ出し、実行しようとするものでした。

まさに、ドラッカーがいうところの「知識が最大の資産である」を習っての戦略的な見識で、そうであったから「20世紀最大の経営者」と称されることになりました。

そんなウェルチは、人材評価について二つの基準枠で評価しました。一つは「価値観の共有」、もう一つは数字などの「責任の達成」です。どちらも達成できたものには最大の評価を与え処遇しました。どちらもできていない者は即解雇、ただ業績は悪くても「価値観の共有」がはかれていれば、あらたなチャレンジの機会を与えました。

「部下を育て、その知識、能力を活用し、みんなに活力を与える」などは、リーダーが「価値観の共有」していることの一つの証です。ここで言いたいことは“価値観”ということのその重要性です。ところで、ウェルチが最も処遇に困ったのは数字は上げるけれど価値観を共有しない人材で、ここでの対応が最大の“課題”を与えました。

いまだかつて継続して繁栄し続ける「組織」で、必ずしも同じとは言えないけれど、活力を引き出す“価値観”がなかったためしはないのです。ドラッカーは「あらゆる組織において「共通のものの見方、理解、方向づけ、努力を実現するには『われわれの事業は何か。何であるべきか』を定義することが不可欠である」だとしているのです。

さらに「われわれの事業は何か。何であるべきか」このことほどわかりきったことないように思うのですが、ところがこのように言います。

「この問いは、ほとんどの場合、答えること難しい問題である」
「これが充分に検討されていないことが、挫折や失敗の最大の原因である。成功はこの問いを考え、明確にすることによってもたらされる」

「ビジョナリーカンパニー」において、IBMのトーマス・ワトソンが言ったことをあげて、そのあり方をさぐります。

「どうすれば共通の目的と方向性を維持できるのか。われわれが信念と呼ぶものの力と、社員の心を動かす魅力にある。成功をもたらす要素の中で最も大切なことは、そうした基本的な信念を守り抜くことである」

だから「ビジョナリーカンパニー」は、以下のことをすすめています。

“信念(基本的価値観)”と“目的”を考え抜き、企業独自の「基本理念(経営理念)」として文書化することが重要である。

その構造は、次のような要素より成り立ちます。

基本理念(経営理念)=基本的価値観+目的基本的価値観=組織にとっての不可欠で不変の主義

目的=単なる金儲けを超えた会社の根本的な存在理由

まず、この基本理念が斉合性がないのであれば成果は得られないのです。

■さあ、やってみよう「基本的価値観」の文書化

「基本的価値観はごくわずかで、3つから6つである。6つ以上超える項目がリストアップされた場合、こう自問するように勧めたい」として、「外部の環境が変わっても、たとえ、これらの価値観が利益に結びつかなくなり、それによって不利益を被ることになったとしても、守り抜くべきものはどれか。逆に、これらの価値観を掲げていては不利になる環境になった場合に、変更でき、捨て去れるものはどれか」「こうして考えてみると、どれが本物の価値観なのか見きわめる役に立つだろう」と助言しています。

このことは「時代を超えた原則」項目と関連します。

・利益を超えて(経営理念に基づく目的、目標が達成がなければ)
・基本理念を維持し、進歩を促す(失敗の乗り越えで実行し続ける)
・社運をかけた大胆な目標を掲げてのチャレンジが必要である。
・カルトのような文化を、一貫性をもって実行し続ける

※ 付言として「他の企業の“基本的価値観”をもとに、自身の企業の基本的価値観をつくる罠には、絶対にはまらないようにすべきだ。他企業をまねたのでは『基本理念』にはならない」とあります。

鈴木敏文さんの発想力

大きな成果を成し遂げるには、経営者が“本質”に沿い適切に“時を告げ”失敗もあるなかで忍耐強く実行しなければなりません。さらにビジョナリーカンパニーになるには「時を告げ続ける時計」つまり経営理念を企業文化となす“組織”をつくらなければなりません。そこのところも考えあわせ、取りあえずは時を告げるについて考えます。

まずは“時を告げ続け”大きな成果を実現させた経営者、セブン&アイ・ホールディングスの鈴木敏文さんの語ること聞きたいと思います。なぜなら「時を告げる」について、多くの示唆があるからです。

鈴木敏文さんは、京セラの稲盛和夫さんと同じ昭和7年生まれだそうで、いくつもの共通点があると言われます。二人とも旧制中学受験を失敗し、就職も希望企業ではなかったのです。まったく別次元のことになるのですが、もっとも共通するのは「二人の基本的価値観でしょう」だと言われています。

では、成功の最大要因である基本的な価値観とは何なのか。稲盛さんは、常に「人間として何が正しいか」で判断し「世のため人のため」を志向して“利他”の心を何よりも大切にとします。鈴木さん自身については、常に「お客様の立場で」で考え、何が正しいかを判断し、会社の都合の悪いことでも躊躇せず決断します。

ここで基本とされているの「マーケティング』」の基本精神そのもので、そのことに加えて鈴木敏文さんの特徴は、その日常業務のあり方が常に回りのほとんどが大反対する「イノベーション」の連続です。

自身の「“仕事の本質”への気づき」を、このように説明しています。

「“未来を起点にした発想”を持ち“客様の立場”で考え抜く、目的が明確になれば、それを達成する手段としてのいろんな知恵やアイディアが浮かぶ、それが“仕事をする”ということです」

こんな見方もしています。

「お客様の“おいしいもの”は“飽きるもの”でもあるから『もっとおいしいもの』を出し続けなければならない」

鈴木敏文さんの成功の源泉をみると、絶えず「今まで世になかったものを世に出し続ける」その「発想力」があってのことで、「目の前にはレールは敷かれていない。だから、どんな方向にも新しく踏み出すことができれば、自分も変えることができる」「過去のレールの延長線上に自分のレールを引いてはいけない」。

さらに「無から有を生み出すには『未来を起点にした“発想”』が大切」「過去が、今を決めるのではなく、未来が今を決める」。鈴木敏文さんの“発想”は、ほとんどの人から大反対を受けました。それについて「過去の経験というフィルターが、未来を見えなくする」「誰もが未来とお客様から『宿題』をもらっている。」とします。

おもしろいことを言っています。

「みんなが良いと賛成することは、たいてい失敗し、みんなが反対することはたいてい成功する」

もとより、未だ世になかったものを行うについて、それは失敗から始まるのだけれど「“本質”さえしっかりつかんでいれば、小さな失敗をしても少し進路が曲がっても、直しながら進み最後は成功に至る」。

鈴木敏文さんは、戦後社会のフェーズ3の「消費者による生活の合理化の時代」において、「明日の顧客は何を求めるかを考え、新しい発想力や“判断の尺度”を顧客に合わせ、迷わず判断していく力“自分で考える力”を持ち、新しい価値を生み出す」ことによって優良企業を生み出したのです。

フェーズ1は、メーカーによる合理化の時代で、フェーズ2は、流通業による合理化の時代だとします。

ビジョナリーカンパニーの条件

日本で「ビジョナリーカンパニー」とはっきり言えそうなのは「トヨタ」「ソニー」「ホンダ」などがよく知られ該当しそうです。「京セラ」はどうか、カルトのよう企業文化を持っています。「パナソニック」はどうか、独特の企業文化を持っていました。「セブン&アイ・ホールディングス」の場合はどうなのか。

セブン&アイ・ホールディングスの「経営理念(社是)」は、「私たちは、お客様に信頼される、誠実な企業でありたい。私たちは、取引先、株主、地域社会に信頼される、誠実な企業でありたい。私たちは、社員に信頼される、誠実な企業でありたい」で、この経営理念から、次の鈴木敏文さんが生れてくるのでしょうか。

「エクセレントカンパニー(超優良企業)」と「ビジョナリーカンパニー(継続する超優良企業)」は違うようです。それは「どのように後継者が選ばれるか」が“岐路”となるようです。「エクセレントカンパニー」となるには“卓越したリーダー”が必要で、「ビジョナリーカンパニー」になるには“卓越した組織”が必要です。

image by: Shutterstock.com

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戦略経営のためには、各業務部門のシステム化が必要です。またその各部門のシステムを、ミッションの実現のために有機的に結合させていかなければなりません。それと同時に正しい戦略経営の知識と知恵を身につけなければなりません。ここでは、よもやま話として基本的なマネジメントの話も併せて紹介します。

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【著者】 浅井良一 【発行周期】 ほぼ週刊

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